今回は、これまで何度も取り上げてきたヤクルト<2267>について、その本質を深掘りし、今後投資対象として期待して良いのかを考えていきたいと思います。ヤクルトの株価は現在なかなか上がってこない状況にありますが、その背景には何があるのでしょうか?ぜひ最後までお読みください。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)
プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
業績推移〜直近20年の動向と「ヤクルト1000」の影響
まず、ヤクルトの直近20年間の業績推移を見てみましょう。

売上高は2022年頃からぐっと右肩上がりで推移しており、営業利益もそれに伴って高まってきています。しかし、直近の2025年3月期に関しては、売上は盛期に近い水準を保ちながらも、利益は少し下がっているのが足元の状況です。
特に利益を見ると、2023年3月期をピークに下がり、今期(2025年3月期)でさらに下がってしまっています。
<国内業績を牽引した「ヤクルト1000」の大ヒット>
売上が拡大した背景には、皆さんもご存知の「ヤクルト1000」の日本での大ヒットがあります。ヤクルト1000は一時期、供給が追いつかないほどの品薄状態が数ヶ月から1年近く続きました。当初は宅配専用品でしたが、後に店頭販売も開始され、今ではスーパーでも普通に並んでいます。
ヤクルト1000シリーズの販売本数を見ると、2024年3月期にピークを迎え、その後は少し下がっている状況です。1日あたりの販売本数は、2025年3月期には平均約300万本で落ち着いています。この商品は単価が高く、その販売増がこれまでの利益増加に大きく貢献したと考えられます。
<ブームの終焉と株価への影響>
ヤクルト1000のブームはピークアウトしたと言えるでしょう。その後、糖質オフバージョンも発売されましたが、これは新規顧客の獲得には至らず、既存顧客が糖質オフに切り替わったケースがほとんどでした(約9割が既存顧客)。
株価の動きと売上本数を比較すると、株価は2023年の半ば頃にピークアウトしており、ヤクルト1000の実際の販売ピークである2024年3月期よりも半年以上早く、ブームの終わりを織り込んでいたように見えます。このように、ブームの場合、株価は実際の数字が出る前に大きく動く傾向があります。

ヤクルト本社<2267> 週足(SBI証券提供)
しかし、株価は現在、ヤクルト1000がヒットする前の水準である約2,500円まで戻ってきていますが、業績を見るとヒット前よりも明らかに上がっています。そのため、株価は正直「売られすぎ感」があると感じています。