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資生堂、なぜ60億円黒字から一転「520億円赤字」予想に?中国依存とハイブランド偏重の危うさ=澤田聖陽

資生堂<4911>が11月10日に発表した2025年12月期第3四半期決算は、通期予想を60億円の黒字から520億円の赤字へと大幅に下方修正する厳しい内容となった。米州事業での減損損失が直接の原因だが、その背景には中国市場への過度な依存と、日用品事業売却によるポートフォリオの偏りという構造的な課題が横たわっている。地域別業績を詳しく見ていくと、同社が抱える事業上の課題が浮き彫りになってくる。(『 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 』澤田聖陽)

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※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2025年11月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。

業績予想、60億円の黒字から「520億円の赤字」へ下方修正

資生堂<4911>は11月10日、2025年12月期第3四半期(3Q)決算を発表した。

決算数値は以下のとおり。

売上:693,817百万円(前年同期比▲4.0%減)
営業利益:▲33,350百万円(-)
コア営業利益:30,080百万円(前年同期比9.7%増)
税引前四半期利益:▲32,518百万円(-)
親会社の所有者に帰属する四半期利益:▲43,983百万円(-)

(注)コア営業利益とは営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失・買収関連費用等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いたもの。

同時に2025年12月期の連結純損益予想を60億円の黒字から520億円の赤字に下方修正した(2024年12月期は108億円の赤字)。

2019年に買収した「Drunk Elephant」を中心に米州事業での減損損失(投資した金額の簿価を減少させる会計的措置)が発生したことが赤字になった主な原因である。

資生堂<4911> 日足(SBI証券提供)

資生堂<4911> 日足(SBI証券提供)

各地域別の売上・損益は…

同社は日本、中国・トラベルリテール、アジアパシフィック、米州、欧州の5つの地域別に売上、損益を開示している(トラベルリテールは旅行者向けの事業)。

以下、各地域別の売上、損益の概況を記載していく。

<日本>

売上:2,191億円(前年同期比0.3%増)
コア営業利益:279億円(前年同期比72.0%増)
コア営業利益率:12.7%(前年同期は7.4%)

「エリクシール」「クレ・ド・ポー ボーテ」の新商品が好調で前年同期よりも利益率は大きく改善し、増収、増益となった。

<中国・トラベルリテール>

売上:2,400 億円(前年同期比▲5.7%減)
コア営業利益:467億円(前年同期比▲5.9%減)
コア営業利益率:19.3%(前年同期は18.9%)

中国はEコマースが好調だが、オフラインは回復してきているものの低迷している。トラベルリテールは中国人旅行者の消費停滞、価格の低下などによって厳しい状況。減収、減益となった。

<アジアパシフィック>

売上:525億円(前年同期比▲0.9%減)
コア営業利益:18億円(前年同期比▲30.6%減)
コア営業利益率:3.3%(前年同期は4.7%)

「クレ・ド・ポー ボーテ」 「NARS」などの新商品が好調なものの、台湾や一部東南アジアの国市場が縮小し、減収、減益となっている。

<米州>

売上:782億円(前年同期比▲9.1%減)
コア営業利益:▲76億円(前年同期は▲36億円)
コア営業利益率:▲9.3%(前年同期は▲3.9%)

「Drunk Elephant」が苦戦で赤字幅が拡大(前年同期比で40%超の売上減少)。その他のブランドは売上が微増か微減。

<欧州>

売上:961億円(前年同期比4.2%増)
コア営業利益:9億円(前年同期比20.6%増)
コア営業利益率:0.9%(前年同期は0.8%)

「Zadig&Voltaire」が前年同期比40%超の売上増加と成長しているが、全体としては黒字ではあるものの低利益率にあえいでいる。

Next: 資生堂は買い?気になる、中国シフトの影響と事業ポートフォリオの偏り

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