不正蔓延で株価急落、堕落した神戸製鋼に「明るい未来」はあるのか?=栫井駿介

製品検査データの偽装により値下がりを続ける神戸製鋼ですが、買いのチャンスは訪れるのでしょうか。賢明な投資家は、いくら値下がりしてもダメな企業には手を出しません。バフェットは、ダメな企業の典型例として「コモディティ型企業」を挙げます。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

鉄は国家なり。不正発覚で株価4割減の神戸製鋼所は復活するのか

検査データ偽装、納入先は500社に

神戸製鋼所<5406>は、アルミ製品などに関する仕様不適合品について検査証明書のデータ書き換えを行っていたことが発覚し、発表前から株価が約4割値下がりしています。

神戸製鋼所<5406> 日足(SBI証券提供)

神戸製鋼所<5406> 日足(SBI証券提供)

納入先は国内外の自動車や航空機メーカーなど500社に及び、調査が進むに連れて新たな改ざんも発覚していることから、騒ぎは収まる様子を見せていません。

一方で、不祥事による株価下落はバリュー株投資にとって千載一遇のチャンスとなる場合があります。もしこのまま株価が下がって割安な域に達した場合、神戸製鋼は買える銘柄と言えるのでしょうか。

中国企業の過剰生産により、製鉄業界は苦況が続く

製鉄業界は、世界的に厳しい競争にさらされています。建設などに使用する量産分野では差別化が難しいため、貿易が自由化されれば新興国から安い製品が流入します。

この10年は中国で需要が増加したものの、それ以上に中国国営企業が多額の投資を行い、生産能力を急速に高めました。いまや世界生産の半分は中国で行われています。

安値に対抗するには、既存の企業は規模を大きくして固定費を下げるか、高付加価値化に舵を切るかの選択を迫られます。その結果合従連衡が進み、国内では新日鐵住金<5401>とJFEホールディングス<5411>という巨大企業が誕生し、海外でもアルセロール・ミタル(欧州系)やポスコ(韓国)が買収を繰り返して巨大化しています。

世界的な寡占化が進んでいますが、状況が改善する兆しは見えていません。最大の要因は中国です。鉄鋼生産量の世界上位10社のうち5社は中国企業であり、これらの企業から大量の鉄鋼が生産され続けているのです。製品価格の下落により、国内最大手の新日鐵ですらたびたび赤字を計上しています。

製鉄所は存在する限り稼働を続けなければなりません。そのため少しでも需要が減少すると、大量の鉄鋼が市場にあふれ、極端な値下がりを起こしてしまいます。

固定費率が非常に高いことから、売上高が減少すれば簡単に大幅な赤字に転落してしまうのです。2015年のチャイナ・ショックでは、需要の減少から危機的な状況に陥りました。

もちろん、中国企業も置かれている状況は同じです。そのため、中国政府は過剰生産能力の削減を表明していますが、それは国の成長率の低下にも繋がることから、そう簡単には進まないでしょう。再び景気が悪化すれば、業界全体が大赤字を計上してしまう可能性があるのです。

Next: 多角化事業で「必ず利益を出さなければいけない」という焦り

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