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日本株への影響は?トランプ大統領とイエレンFRB議長「本当の相性」=E氏

今の市場には楽観と警戒が混在しています。その原因はトランプの場当たり発言だけではありません。FRBの金融政策とトランプ政権の不整合が先行きを不透明にさせているのです。(『元ヘッジファンドE氏の投資情報』)

プロフィール:E氏
国内大手生保、ゴールドマン・サックス、当時日本最大のヘッジファンドだったジャパン・アドバイザリーでのファンドマネージャー経験を経て、2006年に自らのヘッジファンドであるINDRA Investmentsを設立し国内外の年金基金や富裕層への投資助言を開始。2006年10月からのファンド開始後はリーマンショックや東日本大震災で、期間中TOPIXは5割程度下落した中で、6年連続のプラス(累積30%)のリターンを達成。運用歴25年超。

日本株を待ち受ける悲劇。トランプはどこの国の大統領かを考えよ

右往左往するマーケット

トランプ政権が発足して1ヶ月近くが経ちましたが、依然としてトランプ大統領のTwitterや非公式会合での発言でマーケットは右往左往している有様です。

他国首脳に喧嘩を売る発言をしたかと思ったら、突如トランプ節が鳴りを潜めてナイスガイになったりする。政策発表は思いつきのようなTwitterでの発言や、業界団体との非公式会合での発言が洩れて即座に市場に織り込まれるものの、政権高官からの正式な発表や具体的な政策が付いてこないままなので、大統領による独断ばかりです。

つまり、実現性があるかどうかも不明な中で、思いつきのようなトランプ大統領の発言にマーケットが振り回されているのです。

米国民にとって耳障りの良い発言を連発していることでダウは期待先行で連日市場高値を更新していますから、一見すると昨年11月のトランプショック以降のリスクオンマーケットが続いているように見えます。

しかし、年初来でもっともリターンが良いアセットはゴールドですし、年初来で米国金利は低下、安全資産である円も上昇しているなど明らかにリスクオフ的な傾向も出ています。

このように楽観と警戒が混在するマーケットになってしまっているのは、トランプ政権の情報発信スタイルだけの問題ではありません。FRBの金融政策とトランプ政権の政策との整合性もマーケットの先行きを不透明にさせているのです。

では、このトランプ政権とFRBの金融政策の方向性に違いはあるのでしょうか?そして、それはどういった方向に変化していくか、それに伴って日本株や円相場の先行きはどうなるかについて本日は解説します。

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トランプ政権とFRBの親和性と相違点

まず、両者の金融政策の方向性の確認ですが、FRBの金融政策のベースとなる米国及び世界の経済情勢に対する見方は昨年6月のBrexit後をボトムにして、緩やかに強気にシフトさせてきています。

昨年12月のFOMCにおける(メンバーそれぞれのFFレート見通しをプロットした)ドットポイントでは今年の利上げ回数のコンセンサスは2回でしたが、今年に入ってからさらにタカ派的な発言をするFOMCメンバーが増えてきており、従来ハト派と目されていたメンバーの中にも今年の利上げ回数は3回が妥当という主張するメンバーも現われてきました。

FOMCの投票権の半分を押さえている議長や理事達にハト派が多いため、今時点で年3回ペースの利上げ提案を行っても却下されるでしょうが、こういった発言が増えるにつれてマーケットに向けたメッセージは確実にタカ派色に転じています。

一方、トランプ政権から正式に金融政策に関するコメントは出ていません。中央銀行は政権から独立した機関であるので、金融政策不介入は当然ですが、トランプ政権の発信する情報でマーケットの期待値とFRBの政策の差に着目すると、政権とFRBの金融政策の親和性や相違が見えてきます。

2013年12月のテーパリング(緩和縮小)開始決定からほぼ一貫して、マーケットはFRBの金融政策の方向性より常にハト派的な見方をしていました。テーパリング(緩和縮小)終了時期も、初回利上げ開始時期も、昨年12月に決定された2回目の利上げ決定もいずれもFRBはもっと早い段階で到達すると見ていたのですが、結果的に非常にハト派的なマーケットにFRBの決定が収斂しています。

つまり、FRBは米国及び世界の経済情勢に対して常に楽観的かつ強気過ぎたのです。

尤も、FRBの見通しが市場見通しより精度が低くなってしまったのは、必ずしも分析能力が劣るからではありません。

マーケットの混乱を避けるという名目で、金融政策の決定前に十分に引き締めアナウンスをする結果、マーケットがそれを先取りする形でリスクオフになってしまったり、その結果新興国市場などからの資金引き揚げが加速するという、自らの強気見通しでマーケットがリスクオフに転じる結果、経済が見通しより後退してしまうためなのです。

バーナンキFRB元議長と違って、イエレンFRB議長が混乱を避けるために市場との対話を重視するスタンスを採っている以上、これは仕方がないことです。

このマーケットコンセンサスが常にFRBの見方より楽観的というのは昨年秋まで続いていましたが、トランプ氏が大統領選で当選してからがらりと変わってしまいました

選挙前は想像だにしていなかったトランプ氏が大統領に選ばれたショックで、マーケットはトランプ氏の選挙向けに掲げていた政策がすべて実現するという前提で動いてしまったのです。

トランプ大統領の政策は移民政策などで目立っていますが、選挙選での目玉は大型経済対策など景気浮揚の政策でした。財源の根拠がないにも関わらずの大型対策は大衆迎合的な側面が強く、具体性に乏しい実現確度が低いものでしたが、マーケットは「経済対策が実行されることで、米国経済は更に加速し、インフレ率が上昇していく」という世界を想像してしまったのです。

この結果、米国長期金利が上昇し、期待インフレ率の上昇でドル高が加速することで、日本やドイツは自国通貨安と株高の双方で恩恵を受けることになったのですが、この金融政策の方向性に関する急激なタカ派シフトの結果、マーケットとFRBとの金融政策に対する見方はイエレンFRB議長就任以降初めてといえる均衡状態になりました。

即ち、昨年12月時点でマーケットが考える2017年の利上げ回数は2~3回で、一方のFRBも同様の見方をしていたのです。

しかし、ここで注意しなければいけないのは、FRBの金融政策の方向性は一貫しているものの、マーケットが考えるトランプ政権後の金融方向性は一貫性に欠けているという事です。

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