専門職の成果をどう数値化するのか?
それでも企業の論理で特定の職種を裁量労働制に押し込むと、ただの「残業代減らし」のそしりを受けます。
「要は成果を挙げれば良く、そのための働き方は自由」という言葉には、「毒」があります。
裁量労働制に向いていると考えられる「専門職」では、「成果」を測る基準があいまいで、逆に客観的な数字で成果を図れる職種は、製造ラインや営業などに限られます。一般に「専門職」と言われる職種では、顧客評価やノーベル賞などの外部の賞を取る人以外は、客観的評価が困難です。
人事や企画部門の「専門職」の成果はどうやって測るのか。
エコノミスト、アナリストも、レポートの数では評価できず、その内容は誰が評価するのか。証券など、顧客に売り込む側の業態のエコノミスト、アナリストは顧客の人気ランキングなどでの評価がありますが、運用会社・銀行などのエコノミスト、アナリストは客観評価がありません。
米国では在宅勤務を廃止する企業も
米国でも在宅勤務を見直し、廃止する企業が出ています。
チームで仕事をする方が生産性が上がるからとか、昇給昇格には人との接触が欠かせないとか、在宅勤務のメリットとともにデメリットも認識されるためです。
それでも在宅勤務など、働き方については依然として改善が進められています。
利益重視では裁量労働制はうまくいかない
裁量労働制を進める場合、評価方法や条件を明確にしたうえで、労働者に選択させるしかありません。専門職でなくとも、ワーク・ライフ・バランスの面から出世よりも家庭事情に合った働き方を求める人もいるはずです。彼らにも働き方の選択ができるようにしたら、良いと思います。
こうした制度を始めるには、まずは企業と労働者との信頼関係が大事です。労働者よりも株主や利益本意の会社では、この裁量労働制はうまく機能しないと思います。
国会で政治家が議論して決められるものでもありません。旧来の日本的経営と欧米型の成果主義とが混在するなかでの裁量労働制移行には困難が伴い、労使間の信頼関係が不可欠です。
労働者に裁量労働の選択権を与えたうえで、働き方についても労働者に任せるよう、制度的に保証した方がよいでしょう。
私もかつてエコノミストとして金融機関に勤めていましたが、オペラの上演があるので定時に退社しようとすると、当時の上司に「もうお帰りですか」と白い目で見られました。ある程度の地位にまで上がらないと、裁量労働の余地は多くありません。