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北朝鮮崩壊のカウントダウン~あえて核実験をやらせた米中の狙い=高島康司

北朝鮮の水爆実験がひとつのきっかけとなり、アメリカによる北朝鮮崩壊に向けたシナリオが作動した可能性がある。本当にそうした可能性があるかどうか具体的に見てみる。(未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ/高島康司)

米政府筋「中長期的に北朝鮮の崩壊はプラス面が大きい」

北朝鮮崩壊のシナリオが選択された可能性

今回のテーマは、アメリカが北朝鮮の崩壊を誘導するシナリオを選択した可能性についてである。

1月1日に配信した前々回の第361回の記事では、リチャード・アーミテージやジョセフ・ナイなどのジャパン・ハンドラーが結集するシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が2014年10月に出したレポート「安倍の危険な愛国主義」を参照しながら、韓国と関係を改善するため「従軍慰安婦問題」に決着をつけるように、アメリカが安倍政権に強く圧力をかけた状況を見た。

このレポートが出された直後の2014年10月21日、安倍政権は早速韓国に特使を派遣し、関係改善の糸口を探った。その後、両国の外務大臣の高いレベルの対話が繰り返され、2015年11月には日中韓の首脳会談が実現した。

また、12月28日の日韓両政府による「従軍慰安婦問題」の不可逆的な解決に向けての合意も、12月20日にアメリカの外交政策の奥の院とも呼ばれる「外交問題評議会(CFR)」が出した「日本と韓国の緊張を管理する」というレポートがもとになっている可能性が大きい。

これは、「日米韓の同盟を早急に強化すべきときに日韓関係が悪化していることは、アメリカにとってあまりに損失が大きいので、日韓が主体的に関係改善しないのであればアメリカが介入する」としていた。

昨年末までに「従軍慰安婦問題」の不可逆的解決に向けて日韓が急いだ背景には、アメリカのこのような圧力があったと見て良いだろう。

このように、日韓関係の改善はアメリカからの強い圧力によって実現した可能性が極めて高い。しかし、なぜアメリカは2015年のうちに関係改善するように圧力をかけたのだろうか?

前々回の記事では、アメリカは北朝鮮を崩壊させる選択をした可能性があることを指摘した。

どのようなシナリオになるのかはまだ分からないが、もしアメリカがそうした選択をしたのであれば、日韓関係の改善を早急に行い日米韓の同盟を強化することは、北朝鮮崩壊に向けた準備であると見ることもできる。すると、2014年10月から始まったアメリカの圧力も十分に説明がつくかもしれない。

いつもの「瀬戸際外交」とは異なる水爆実験

そのようななか、1月6日、北朝鮮は水爆実験の成功を発表した。通常の核実験は4年ぶり3回目だが、原爆の数百倍から1000倍の威力の水爆は今回が初めての実験である。

これまでの北朝鮮の核実験は、アメリカや日本を恫喝して目的を実現する瀬戸際外交の手段としての特徴が強かった。そのため北朝鮮は、核実験実施の数週間から数日前にこれを予告し、欲しいものを要求する傾向が強かった。いわば過去3回の北朝鮮の核実験には明確なメッセージがあり、意図が分かりやすかった。

しかし6日に実施された水爆実験は、友好国とされている中国に対してさえ実験の30分前に通知しただけで、他の国々には予告なく突然と実施された実験だった。

そのためこの水爆実験は国際的に大きな驚きを呼び、北朝鮮の意図を巡って議論が起こった。国民に約束した経済成長を達成できなかったので、キム・ジョンウンの支配体制を固める必要から実施したという見方から、キム・ジョンウンが訪中して首脳会談を実現させるために行ったとする見方まで、さまざまな議論が出た。

だが、10日の北朝鮮労働党の「労働新聞」には、「核の廃棄を迫る6カ国協議の交渉は拒否するが、もし北朝鮮を核保有国として認めるのであれば、アメリカを和解し、平和条約を締結する用意がある」とする社説を発表した。このことから、今回の水爆実験の目的は、北朝鮮を核保有国としてアメリカに認めさせることにあったと見てよい。

Next: 米中は事前に察知しながら北朝鮮にあえて核実験をやらせた

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