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北朝鮮崩壊のカウントダウン~あえて核実験をやらせた米中の狙い=高島康司

米国の狙いはどこにあるか?テリー博士の北朝鮮崩壊推進論

「従軍慰安婦問題」のような複雑な問題を昨年末までに最終決着させ、日米韓同盟を強化せよという切迫した圧力の裏には、もっと違う意図があると見たほうが自然なのではないだろうか。

そのような視点から調べると、最近スー・ミー・テリー博士という人物が書いた北朝鮮崩壊推進論が注目を集めているのを発見した。

スー・ミー・テリー博士は小学校まで韓国で育った在米韓国人で、CIAの元上級分析官だった人だ。そしてなんと、ブッシュ、オバマ両政権で米政府の外交政策の中枢である「国家安全保障会議」の「韓国、日本、海洋問題部門」の部長として、ホワイトハウスの北朝鮮を含む北東アジアの基本政策の立案を担当していた人物だ。現在はコロンビア大学に席を置いている。

オバマ政権が安倍政権に露骨に圧力をかける3カ月前の2014年7月、スー・ミー・テリー博士は、米外交政策立案の奥の院である「外交問題評議会(CFR)」が発行する外交誌、「フォーリン・アフェアーズ」に「自由な統一朝鮮:朝鮮半島の統一はなぜ悪くはないのか」という論文を発表した。ここでスー・ミー・テリー博士は次のように主張している。

北朝鮮が崩壊し朝鮮半島が統一するには次の3つのシナリオがある。(1)北朝鮮が中国の経済モデルを採用して発展し、韓国との経済格差を縮めた上で韓国が平和理に北朝鮮を吸収するというソフトランディング、(2)キム・ジョンウン体制が内部から自壊し、韓国が北を吸収するというハードランディング、(3)北朝鮮、韓国、日本、アメリカが全面的な戦争になる戦争のシナリオの3つだ。

このうち、(1)と(3)はほとんど現実性はない。一方(2)は十分な現実性がある。キム・ジョンウン体制は国内問題の収拾がつかなくなり、自壊する可能性は大きい。

これまでは北朝鮮の崩壊は、アメリカと周辺諸国に対して大きな脅威となると見るのが一般的であったが、そのような認識に捕らわれずに現実を見ると、中長期的には北朝鮮の崩壊にはプラス面がとても大きいことに気づく。

たしかに崩壊直後の時期にはリスクが伴うだろう。しかしそうしたリスクは、関係国の協調で十分に解決できる範囲だ。統一のメリットから見れば小さい。我々はキム・ジョンウン体制の崩壊を恐れるべきではない。

このような主張だ。この論文に対して、韓国の専門家から反論が寄せられたが、スー・ミー・テリー博士は反論に応えながらも北朝鮮自壊論を強く主張した。

その後2015年4月には、アメリカがイランに妥協したように北朝鮮を容認する姿勢をとるならば、核兵器を保有する北朝鮮の脅威は逆に高まる結果になる。だから、キム・ジョンウン体制を追い詰める手をゆるめてはならないとする論文をやはり「フォーリン・アフェアーズ誌」に書いている。

Next: 無視できないテリー博士の分析とオバマ政権の真意

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