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孫正義が「危機」に備える2021年が到来、いったい何を恐れている?=栫井駿介

航空、観光、外食、アパレル…瀕死の業種は挙げればきりがない

孫さんの発言から読み取れるのは、大企業が破綻し、それがドミノ現象となって企業が次々に破綻するということです。確かにまだ新型コロナショックによる経済を揺るがすような大規模な破綻は発生していません。

しかし、それは政府の過剰ともいえる融資に支えられた綱渡りとも言える状況にあるのかもしれません。具体的な業種を考えても、ヤバそうなところは次々に思い浮かびます。

例えば、航空業界です。一時はロックダウンによって、飛行機に客が全く乗らないと言う状況になりました。最悪の状況からは回復したとは言え、いまだに客足の戻りは鈍いものです。

国内線は、日本でもGoToラベルの影響などにより回復している部分もありますが、国際線はどうしようもありません。仮にワクチンの接種が世界的に開始されたとしても、大手を振って外国人を向入れられる状況はまだまだ先になることが予想されます。それまでは兵糧攻めされている城のようにギリギリの戦いを強いられているのです。

今は、政府やメインバンクの融資によって何とか支えられている状態です。しかし、どこかで政府が匙を投げるようなことがあれば、すぐにでも破綻してしまうというのが航空会社の現状です。日本だけでなく、世界中で同様のことが起こっています。

既に世界中で航空会社の破綻が起きています。ロックダウンが起きた4、5月にかけてだけでも以下のような航空会社が破綻しています。

・ヴァージン・オーストラリア航空
・ラタム航空(チリ)
・アビアンカ航空(コロンビア)
・タイ国際航空

このリストを見ると、政府に余裕のない国の企業からギブアップしている状況です。世界最悪の債務水準である日本にとっても他人事ではなく、財政の議論になるとすれば、槍玉にあがってもおかしくありません。極めて慎重な姿勢で見ていくことが求められます。

ヤバそうな業種は他にも挙げればキリがありません。観光、外食、アパレル、小売、エンタメ…コロナ禍が続く限り、余裕のなくなった企業から1社1社とギブアップしていくことが想定されます。その中に世界的にも巨大な企業が含まれてきてもおかしくありません。大きな企業が倒産すると、その負債を通じて連鎖倒産が起きると言うシナリオは十分に考えられます。

リーマン・ショックを連想させる「CLO」の肥大化

そんな中で注目に値するのが、CLOと言う金融商品です。これは様々な貸付をまとめた上で、細分化して投資家に売り出す、いわゆる証券化商品と呼ばれるものです。

証券化商品とは、あの悪名高きリーマン・ショックの元凶ともなったものです。その時は、アメリカの住宅ロー(サブプライムローン)を束ねた証券化商品(CDO)が金融市場に出回っていました。

そこへ住宅ローンの焦げ付きが発生したことで証券化商品の価格が大幅に値下がりし、最終的にリーマン・ブラザーズの破綻と言う形で金融危機もたらしたのです。

CDOとCLOで大きく異なるのは、裏付けとなる貸付が分散されていることです。サブプライムローンでは住宅ローンだけが対象になっていましたが、CLOはあらゆる業種に分散しています。それによって一部の業種が悪くても他のところが支えとなり、大幅な価格下落は起こりにくいと言うものです。

ところが現在のコロナ禍では、セクター分散というのもあまり意味をなさなくなっています。というのも、上記に挙げたように、あらゆるセクターで危機が起こっているからです。

そもそも融資を必要とする業種と言うのは、リアルな店舗を持っていたり、大量の設備投資を必要とするところが多いものです。それらは、好調なIT関連とは異なる、まさに従来型の業種と言うことができます。

緊張の糸が切れた時、それらの企業がバタバタと倒産してしまうということも十分に想定されるのではないかと考えます。そうなると、2018年の時点で流通残高が6,600億ドル(約70兆円)に及ぶCLOもただでは済まないでしょう。

なお、そのCLOを最も多く保有している金融機関が、日本の農林中央金庫と言われています。これに対して、日銀や金融庁は警戒感を示しました。ここが火薬庫となってしまわないことを祈るばかりです。

Next: 孫さんの姿勢を参考に。「ブラックスワン」は必ず現れる

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