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習近平のキリスト教弾圧が致命傷に。中国は欧米一体の封じ込め戦略で沈む=勝又壽良

2番目の輸出市場を失う痛手

米国がTPPへ復帰することは、中国にとって「死の宣告」を受けるに等しいことだ。米国を含めたTPP12ヶ国が、一大経済圏をつくれば中国を締め出すことになる。中国から米国へ輸出することが、関税面から大きな制約を受けるのだ。TPP加盟国で生産する物品が、優先的に米国へ輸出されることを意味する。もはや、「中国はお呼びでない」ので、蚊帳の外に置かれる。

中国にとって、米国は2番目の輸出先である。その輸出先が、時間を掛けてほぼTPP加盟国に取って代られるのだ。

<2019年 中国の主要輸出国別シェア>

EU:17.15%
米国:16.75%
ASEAN:14.38%
香港:11.16%
日本:5.73%
(資料:中国海関総署より算出)

上記のような事実を熟知している中国は、米国がTPPから脱退したことで胸をなで下ろしたところだ。これは、中国当局者が語っていたので真実である。

米国がバイデン政権になれば、TPP復帰問題は蒸し返されるはずである。そこで、中国の戦法は、米国がTPPに復帰する前のTPP11で「潜り込みたい」と画策を始めている。

TPP11は、TPPに比べて知的財産権問題の24項目を棚上げしただけである。中国がTPP11へ加盟したくても、国有企業の項目に抵触することは明らかである。中国が、国有企業を縮小してTPP11に合格する努力をするかと言えば、それはあり得ないこと。「国進民退」を旗印に掲げている以上、共産党政権の核心部分である。

中国は、これを承知でTPP11に加盟希望を発表している。現実に、中国政府は加盟することが不可能であることを知りながら広言する不可解な行動だ。これは、TPP11加盟国へアピールすることで、賛同国が現れることを待っているのであろう。だが、日本、豪州、ベトナム、シンガポールという主力メンバー国が、スクラムを組めば不可能であろう。

日本は、尖閣諸島問題で中国と緊張関係にある。豪州は、いわれなき中国からの経済制裁で、欧州を「反中行脚」しているほど。ベトナムは、中越戦争と南シナ海の自国島嶼を奪われた怒りを引きずっている。TPPの原加盟国になったのも、中国と別の経済圏になりたいという理由だ。要するに、中国の顔も見たくないという心情である。ベトナムは、TPP11結成で日本に最も協力した国である。

中国の本音は、TPP11に圧力を掛ければ、何とか加盟できると安易に考えているのであろうが、いずれ不可能ということが分かるはずだ。

米国「TPP復活」に現実味

米国が、中国の動きを知ればどう出てくるか。

米中経済デカップリングを唱えてきた手前、中国がTPP11に加盟するようなことがあれば、「獅子身中の虫」になる。米国がそこまで「お人好し」であるとは思えないのだ。

米国の次期バイデン政権は、同盟国重視である。TPP11は、米国の同盟国ないし友好国である。こういう事実を踏まえれば、米国のTPP復帰が米中デカップリングを実現する最適手段になろう。ただ、米国製造業復活の手がかりをつくらなければならない。そうしなければ、米国の雇用問題が持ち上がるからだ。

最近、前述のように第4次産業革命による技術進歩が進んでいる。この効果が、はっきりと見える形になれば、米国のTPP復活が現実味を帯びるであろう。

Next: 中国の大誤算。EUと米国の溝は深くない

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