ランキング結果がバラバラな理由(2)~調査している街のメッシュの細かさが違うから
同じ“住みたい街”でも、調査しているメッシュが細かければ細かいほど、票が分散して順位が変わります。この影響が顕著に現れているのが、住みたい街と駅と自治体の違いです。
同じSUUMO内の調査でも、住みたい“街”というおおまかなメッシュでアンケートを取ると「横浜」が1位になりますが、住みたい“自治体”という細かなメッシュでアンケートを取ると「東京都港区」が1位になっています。
自治体関係なしに横浜市中区でも西区でもよければ、横浜に得票数が流れるものの、細かな自治体ごとに分けると横浜ではなく東京都港区が勝ってしまったということでしょうか。
国政選挙でいうところの、小選挙区だと1位になる人が東京都港区で、中選挙区や比例代表などで1位になる人が横浜といったイメージです(うん、わかりにくい例えです…)。
いい部屋ネットの大東建託のランキングでも住みたい街(駅)ランキングだと1位は「吉祥寺」、2位は「横浜」となっており、SUUMOの調査と近い結果となっていますが、住みたい自治体ランキングだと「東京都港区」が1位になるのです。
ランキング結果がバラバラな理由(3)~調査手法が異なるから
おそらく結果が異なる最も大きな理由は、調査手法が異なるからだと思います。
各社はそれぞれ結構違った調査方法を用いてランキングを作成しています。具体的には3つの方法に分かれます。
<1.アンケート調査>
社会科学的にオーソドックスなやり方がこの「アンケート調査」です。各項目の設定や母集団の調整など、偏りが出ないように工夫する必要がありますが、最も科学的な方法です。
今回調べてみた中では、いい部屋ネットの大東建託、SUUMO、長谷工アーベストはこのアンケート調査による分析を行っていました。
特にいい部屋ネットの大東建託は約19万件の回答を各自治体の人口比に割振るとともに、詳細な調査項目などを明示しており、極めて中立的な調査であったことがわかります。住みここちランキングについては実際に居住している場所についての回答のため、居住者の本音が反映されています。
SUUMOは約7,000件、長谷工アーベストも2,775件のアンケートを基に分析しており、調査件数としてはまずまずといったところです。調査手法として非の打ちどころがない方法だと思います。
<2.検索・問合せ数からの算出>
大手不動産ポータルサイトのホームズは自社のサイトにて検索・問合せされた数をもとにランキングの作成を行っていました。
検索数などは、実際に引越しをする人や不動産を購入する人が具体的に調べている内容ですのでかなりの数であり、全量で分析しているとしたら、調査数としては最も多いと思われます。
しかし、一人の人がいくつものエリアを検索したり、仕事などで否応なしにその街を検索したりと、調査の目的に合わないノイズが含まれてしまうことが想定されます。
ポータルサイトを検索する人は、住みたい街を検索しているのではなく、仕事などで引っ越す先を検索しているのですから、検索数と住みたい街との相関性は必ずしも高くないと言えます。
<3.住宅ローン利用数、審査員方式>
住宅ローンのARUHIが行っている「本当に住みやすい街大賞」はかなり独特で、住宅ローン利用数と審査員の評価によるランキングとなっています。
※参考:「本当に住みやすい街大賞」、前回2位の赤羽はなぜランキング圏外になったのか(櫻井幸雄) – 個人 – Yahoo!ニュース(2020年12月15日配信)
こちらの記事にもあるように「手が届く範囲での住みたい街」のランキングという側面が非常に強いものになっています。
科学的手法としてはかなり偏りが出るやり方です。というのも大規模マンションや戸建の分譲が一気に増えた街は、候補にノミネートされやすく、分譲が終わると急激にランキング外に落ちてしまうからです。
また、本当は住宅の価格が安く、家を購入して住みやすいエリアだったとしても、すでに大規模開発をする余地がなく小規模な開発しかされないエリアはノミネートすらされないという問題を抱えた調査手法です。
まぁ、そういった定量的に分析できない問題をカバーするための審査員方式なのかもしれません。
「本当に住みやすい街大賞」と銘打っていますが、住みやすさと家が売れているということの相関性は必ずしも高くないという意味では、科学的手法としてはちょっと弱いなぁと思います。
どちらかというと住みやすい街ランキングではなく、家を売りやすい・買いやすい街ランキングというのがネーミングとしてはしっくりきます。
・SUUMO:アンケート数7,000件
・ホームズ:検索・問合せ数から算出
・大東建託:アンケート数 約19万件、各自治体の人口比に合わせて調査
・長谷工:アンケート数2,775件
・ARUHI:住宅ローン利用数、審査員方式