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なぜ総務省は接待されるのか。日本特有「放送免許付与特権」が生む政権とマスコミの主従関係=原彰宏

降板していくNHKの人気キャスター

一連の流れの象徴的出来事が、NHKの国谷裕子氏の降板です。

クローズアップ現代という番組で、集団的自衛権行使容認を政府が閣議決定したことに対して、「非常に密接な関係のある他国が強力に支援要請をしてきた場合、これまでは憲法9条で認められないということが大きな歯止めになっていたが、果たして断り切れるのか」「そもそも解釈を変更したことに対する原則の部分での違和感や不安はどうやって払拭していくのか」と、菅官房長官(当時)に繰り返し質問したことによる更迭ではと言われていましたね。

最近では、菅総理に学術会議での委員任命拒否問題を聞いた「ニュースウォッチ9」の有馬嘉男キャスターが降板した問題があります。またまた、菅義偉総理(前官房長官)がらみですね。「総理が怒っている」と、NHK側に抗議したとされているのが、いま話題の、“飲みの誘いを断らない女”山田真貴子前内閣広報官です。

NHKでは、「クローズアップ現代+」の武田真治アナウンサーも降板しました。どうやら、コロナ対策を二階俊博自民党幹事長に質問したことで怒らせたようです。

安倍前総理も厳しかったのですが、菅総理、二階幹事長の「地雷」は、もっと強烈なもののようですね。

政権とマスコミの上下関係

完全に力関係では、政権とマスコミが上下関係になっています。民主主義とは、政権とマスコミは同じ土俵に位置するものでは無いのでしょうかね。

総務省に肝心なところを抑え込まれているマスコミは、常に政権に“マウント”を取られている状態なのかもしれません。

それは新聞にも影響があり、新聞社はテレビ局を持っているので、新聞という媒体で政権に強い姿勢に出れば、“テレビで仕返しが来る”ことになり、結局は、マスコミ全体で、政権には強く出れない状況が作られているのです。

日本では、クロスオーナーシップ(同一資本が新聞・テレビ・ラジオなど複数にまたがる業種のオーナーになること)の規制が緩く、新聞・テレビ・ラジオが系列化していることが、言論の多様性を阻害し、国民の知る権利が損なわれるという問題を引き起こしていると指摘されています。

前述の「萩生田文書」が在京キー局に送付されたことを、大手新聞社やテレビ局は6日間も報道しませんでした。最初に取り上げたのは、「NO BORDER(インターネットメディア)」でした。

クロスオーナーシップが厳しく規制されて、新聞社とテレビ局が相互に独立するようになれば、テレビ局への圧力を新聞がすぐに報じたり、逆に新聞の再販売価格維持制度などの問題についてテレビの報道番組が詳しく論じるなど、もっと自由な報道が促進されるでしょう。

ちなみに、テレビが「東京五輪・パラリンピック2020」に対して批判的な報道ができないのは、クロスオーナーシップの新聞社のほうが、スポンサーになっているからなのでしょうかね。それとも広告代理店に気を使っているのでしょうか…。

これらの状況を表す極めつけの出来事が、前述の、在京キー局に公平中立の報道を促す「萩生田文書」に一連の流れです。いわば文書には書かれていない、圧力をかけるような文章送付後に、自民党の情報通信戦略調査会がNHKとテレビ朝日の幹部を事情聴取したあと、2016年2月の高市早苗総務大臣(当時)の言葉がすべてを物語っています。

「政治的公平などを定めた放送法第4条に違反した場合は、放送局に電波停止を命じる可能性がある」トドメのような発言ですね…。

Next: 日本から消えた「電波監理委員会」。記者クラブは何のためにある?

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