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退職金の使い道は限られている。ローン完済や資産運用に回す前に知るべき困窮リスク=牧野寿和

退職金を運用するとどれくらい増える?

元本500万円を、ある金融商品で10年間運用して、その結果、平均して年利1%、3%、8%で運用したとします。

なお、この計算は単純に、利息を複利で計算したのみです。通常、収益について税金、そのほか金融商品取扱金融機関に諸費用の支払いが必要です。

その結果は、次の通りです。

年利1%で運用できれば、利息が52万3,111円になります。
年利3%で運用できれば、利息が171万9,582円になります。
年利8%で運用できれば、利息が579万4,625円と、元本の2倍以上になります。

ただ、一度に500万円を投資して、10年間運用した机上の成果です。

この収益を多いと思うか少ないと思うかは、ご自身のこれまでの人生と家計運営の経験から評価できるものでしょう。

リスクも一緒に考えることが必須

ここからが大事なことです。元本が保証されていないということは、利息分の金額を損する可能性もあります。

具体的に上記の例で、10年後の手元の資金は、運用が1%、3%、8%の順に損失が出た場合は、

・500万円-52万3,111円=447万6,889円
・500万円-171万9,582円=328万418円
・500万円-579万4,625円=0円

計算上は上記の通りとなり、最悪の場合、老後の生活資金が消滅してしまいます。

つまり、元本が保証されていない金融商品で運用することは収益が上がる分、損失の分も考えておく必要があるのです。

この収益と損失の範囲(ぶれ)を「リスク」と言います。

最悪の場合は、投資したお金がなくなってしまう。投資したことで家計へ悪影響を与えないよう、このリスクを容認できる資金が必要です。そのため、老後の生活での株式や投資信託の運用は難しいのです。

従って、現役の時代に元本が保証されていない金融商品で運用したことはない方が、退職金を資金に初めて運用することは、心身が衰えていく中、大変危険だと言えるのです。

退職金は貴重な現金

「退職金で住宅ローンなど借金の完済に充てたら、老後の生活はどうなりますか?」と相談にみえる方もいます。

結論を言いますと、手持ちの現金が無くなります。

ローンを繰り上げ完済した後、突発的に現金が必要になった時、カードローンなどを利用してお金を借りることができるでしょう。

問題は金利です。通常、住宅ローンの金利より間違いなく高くなります。

例えば、ある金融機関で500万円を10年返済、年金利8.0%の融資で受けたとします。返済は、毎月60,664円、利息額227万9,656円になります。

老後の生活には大きな負担となり、最悪の場合、老後破綻になりかねません。

従って、現役中の返済を老後も続けるのであれば、現役中に家計支出を減らずなどの対策をしてその生活に慣れておき、老後の生活に支障がないようにすることも大切です。

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