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ワクチン特許権放棄では“接種遅れ”は解決しない。製薬会社を「儲けすぎ」と批判する前に日米政府がやるべきこと=房広治

ワクチン特許権放棄の議論はどう決着する?

読者からもコメントを多数いただいているが、ワクチン特許の一時制限については意見が二分された。アメリカの大統領が、Vaccine Patent Waiver(ワクチン特許権の放棄とでも訳すのだろうか)を支持したのは驚きで、世界中のニュースになった。

WHOやワクチンの開発に遅れている国々の政治家たちは、自分たちのこれまでの失敗を認めたくないがために、ワクチンが世界中に行き渡らないのは、巨大製薬メーカーのせいだという論法のすり替えのように、私には聞こえる。

そこで、ワクチン特許権の一時停止よりも、もっとよい提案がないかを考えた。

アメリカがアメリカ国内と同じように真剣に発展途上国へのワクチン供給を考えているというアピールをしたいのであれば、もっとよい提案はある。

発展途上国のために米国が購入すれば、世界にワクチンは行き渡る

バイデン大統領は、2兆ドルのコロナ対策パッケージをアメリカ国内の対策のために打ち出した。世界のお金の残高が100兆ドルであるから、2兆ドルぐらいマネーサプライが増えたところで、たいした影響はない。

であれば、発展途上国のワクチンのために2兆ドルを拠出してみればどうだろうか?

COVAXという発展途上国向けの組織が、現在ワクチンを買えない状態でいる。これは、COVAXの買取価格を5ドルに固定して発展途上国への供給を考えたため、ファイザーやモデルナ社は、南アフリカに23ドルで売った方がよいと判断するのが当たり前なわけだ。

では、ファイザーに、アメリカ国内向けの20ドルでアメリカ政府がCOVAXの代わりに2兆ドル分を買う契約をすればどうなるか?

一気に1,000億回、世界の誰もが、11.5年分のワクチンを確保できることになる。これで、特許の一時停止の複雑な議論をしなくて済む。アメリカにとっては、アメリカのGDPの2%にも満たない出費で、アメリカのハイテク会社のやる気を無くさせる事態も避けられる。

実際には、COVAXが1回当たり5ドルは出せるわけだから、アメリカ政府の負担は1.5兆ドルまで減り、また10年しない間にもっと安くて変異株に対して有効なワクチンを開発する方に資金を投下できるわけで、その方が特許の一時放棄を特定の企業に求めるよりも効率的ははずだ。

もうひとつ、なぜこの方法が良い提案だと思うかについては、次の理由からだ。

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