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コロナ禍の「物価下落」は政府の勘違い。見えないインフレ圧力が日本と世界経済を突き落とす=斎藤満

気づかぬうちにインフレ圧力も

ところが、主要国の多くで、コロナ危機の需要面に集中した経済対策がとられています。

例えば、感染拡大を阻止するためにロックダウン(都市封鎖)をする一方で、財政金融両面から需要追加支援策がとられています。

米国ではコロナ支援として約5兆ドルの財政支援がなされ、日本やユーロ圏でも同様の対応がなされました。戦時中を除けば、これまでに最大規模の財政赤字と、大規模な金融緩和策が講じられました。

そのほとんどが需要追加型の支援策で、供給対策は手薄のままです。実際、半導体などの供給不足で、自動車生産が制約を受けています。

米国や日本では政府から直接給付金が配られ、消費需要を刺激、日本では旅行や飲食に補助金を出して需要を誘発しました。

本来、コロナ禍で需給両面で制約がある中で、このように需要中心の支援策がとられ、しかもその規模が半端でなかったため、知らないうちにインフレ圧力を高めている面があります。

最も積極的な経済支援を行った米国では、ワクチン接種の進展でコロナの制約が小さくなっている中で、巨大な需要効果が表れ、長年2%以下にあったインフレ率が、この4月には前年比4%を超えてきました。

日本でも政治面から携帯料金の引き下げがなされ、消費者物価は前年比でマイナスになっていますが、これを除けばインフレ率はプラスになるようになりました。

また世界的な需要刺激策の中で、コモディティ相場は軒並み大きな上昇を見せています。原油価格はこの1年で約2倍になり、銅やその他の鉱物資源も大きく上昇しています。また、小麦、大豆なども価格が上昇、これらを原材料とする食料品の価格も次第に上がりつつあります。

コロナ危機の影に隠れて、気づかぬうちにインフレ圧力が高まっています。

想定外のインフレ上振れのリスク

供給制約が残ったまま、これを放置して需要の追加を続けると、需給はそれだけタイトになります。供給制約が一時的でなく、構造変化による「ニューノーマル」化すればなおさらです。

25日にコンファレンスボードが公表した5月の消費者信頼感指数では、その数字よりも同時に公表したサブ・インデックスに大きなヒントがありました。

例えば、「雇用が潤沢」とする人の割合から「仕事を見つけるのが困難」とする人の割合を引いた差分が34.3%となり、2019年のピーク38%に迫る高水準になっています。

この数字、失業率の裏返しで、この数値が大きくなる時は失業率が低くなります。2019年の失業率は3%台でした。この数字が示唆するのは、現在の労働市場は失業率が3%台並みにタイトだということです。

にも拘らず、FRBは雇用水準がまだコロナ前より何百万人も少なく、彼らが職に戻るまで最大限の金融支援を続けると言っています。現在の失業率は6.1%ですが、コロナ・ショックで何らかのボトルネックが発生していて、この失業率水準でも実際の労働市場はひっ迫し、人手不足が見られます。

それでも大規模な財政支援の下で金融も大規模緩和を続ければ、コモディティのみならず、一般物価も想定以上に上がりやすくなります。

米国の消費者物価は年初来4か月ですでに2.1%、コアで1.3%も上昇しています。年率換算すれば、それぞれ約6%、4%の上昇となります。FRBの2%目標を大きく上回ります。

当局が2%を超えるインフレでも当面容認すると言っていますが、市場は高いインフレ率を目にすれば、インフレ懸念を持ち、長期金利は上昇します。

FRBはこれを抑えるためには今以上に大量の国債買い入れを余儀なくされ、7兆ドルを大きく超えるFRBの資産はさらに膨張します。

そしてこれがまたインフレ懸念を呼び、FRBのインフレ対応は後手に回ります。

Next: コロナ・デフレは危険な偏見。米国のインフレ「上振れ」に要警戒

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