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大塚家具「上場廃止」は当然の結末。お家騒動より深刻な3つの欠陥をヤマダは克服するか?=栫井駿介

失敗の原因その1. 中途半端な立ち位置

失敗の原因の1つ「中途半端な立ち位置」というのは、大塚家具が公表している「アニュアルレポート」に自らそれを示してしまっています。

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前述の通り、大塚家具はメーカー直接仕入れによって、他の家具店よりも安く売るということで業績を伸ばしてきました。

しかし、今や「ニトリ」や「IKEA」など、ものすごく安いところが台頭してきました。するとその時点で大塚家具にとって安いというポジションは失われてしまって、むしろどちらかというと「高い家具屋」という立ち位置になってしまいました。

さらに、割高といっても高級な家具を扱っているわけでもなくて、確かによい家具ですけれども、最高級品ではない。しかもこれまでは中流層を相手にやっていましたから、大塚家具で買ったからといって、ハイブランドということにはならないわけです。

その結果、どっちつかずというところになってしまって、富裕層が来るわけでもなければ、中間層以下が来るということもなくなってしまいました。

この点、勝久氏は会員制を続けたいということで、その会員制のお客さんというのは例えば百貨店に来るような、そこそこお金を持っているお年寄りだとは思うのですが、今後も経営が長く続けられるかどうかは別として、少なくとも彼らがいるうちは、会員制のビジネスによって存命できた可能性は十分にあったという風に思います。

ところが久美子氏は、マス層を取りにいき、一方ではニトリなどに対抗する明確な策もないまま、このような立ち位置の不明瞭な戦略を取ってしまったというのが、1つの失敗というところになります。

失敗の原因その2. リストラ遅れによる原価高

また失敗原因のもう1つは、リストラの遅れというところがあります。

以下の図表にあります通り、売上高販管費率です。

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この販管費というのは、例えば物件の減価償却費、あるいは物件を借りている費用だったり、あるいは人件費だったりします。

参考に挙げた「ニトリ」が売上高に対して38.6%なのに対して、大塚家具は63.6%です。すなわちショールームや人件費とかにお金をかけすぎていました。

売上高販管費率がこれだけあると、これに当然、原価が加わってしまうので、原価が3〜4割いった時点で、ほとんど利益が残らないというような状況になってしまいます。これでは、どう頑張っても利益を出すのは難しいです。

となると必要なのはリストラということになって、このショールームも私が数年前に行った時もガラガラでした。まったく利益を生んでいないというのが、一目でわかる状況でした。これを例えば縮小するなり、数を減らすなりして、まずはコストを削減しなければならなかった。

またその時に行って感じたのは売り場にお客さんが全然いないのに、店員さんはいっぱいいたりしました。なので、店員さんの手が余ってしまっているわけです。

お客さんも来なくてしかも会員制も辞めてしまいましたから、少ないお客さんに積極的に接客するというようなこともなかなかないわけで、人員に関しても明らかに余っているという状況でした。

これではどう考えても成り立ちませんから、まずはそこをスマートにさせることが第一なんですけれども、これができなかったということは、最大の失敗要因なのではないかと思います。

同じように有明にも大きいショールームを持っていたりします。これらは削減できなかったことによって、どんどんお金だけが流出して、数年前にはいよいよこの現金が底をついてしまうのではないか、というようなことにもなってしまっています。

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