失敗の原因その3. 経営者としての覚悟の無さ
この現金がなくなる事態を招いたことには、伏線がありました。実は、勝久氏を久美子氏が追い出した時に、株主の賛成を少しでも得ようと配当を引き上げたのです。
配当を引き上げるというのは、つまり会社にある現金を払い出してしまうということですから、そこで多額の現金を払い出したがゆえに、もう会社の金庫にお金が残っていないというようなことにもなってしまいました。お家騒動が将来の経営に尾を引いてしまっている、ということになったわけです。
また何より足りなかったのは、経営者としての覚悟の無さだったと思います。
こうやってお家騒動で敵もたくさんでき、そんな中でも合理的に考えたら、やはりリストラしなければ始まらない状況だったのは目に見えていました。
ところが、敵をたくさん作ってしまいましたから、ここでリストラということになると、従業員の人心を掌握できないということになってしまいかねませんでした。
ただ、そこで覚悟を持っていれば、もしも従業員全員がいなくなったとしても、私はこの会社を再建するために何とかやりきるぞという気持ちでいなければならなかった。
それほど困難な状況に立ち向かっていたはずなんですけれども、実際はリストラなんかも目に見えて行うこともなく、ただただ現金の流出が続いて、苦しい状況になって外部に助けを求めざるを得なくなったというのが大塚家具の状況です。
特に私が強調して言いたいのは、この経営者の覚悟というのは一番大切なことだということです。
どんな企業であってもやはり経営が駄目になってしまったら、そうそう伸びるものではないです。逆に苦しい状況にあっても、経営者がちゃんと気持ちを振り絞って覚悟を持ってやることができれば、その会社は復活する可能性がかなり高いという風に実感として持っています。
投資する時には、そういった経営者の覚悟というのはぜひ皆さん見ていただきたいと思います。
痛みなくして改革なし
さて、このままでは投げっぱなしになってしまうので、大塚家具はどうすれば良かったかというところを最後にまとめたいと思います。
やはり方向性としては高級路線化、売り上げのボリュームは減ってしまうのですが、売り上げの価格を上げることによって、利益が残るというようなやり方が1つの選択肢としてあったと思います。
これはもともとこの大塚家具でやっていた会員制ビジネスだったり、いま勝久氏が匠大塚でやっているようなスタイルが、1つの方向性としてはあったのではないかと思います。
また逆にマス層を重視して、それこそニトリやIKEAに対面で挑んでいくという方向性も、頑張れば、なきにしもあらずだったと思います。
「ニトリ」とか「IKEA」だと、どうしても画一的なスタイルになってしまいがちですが、大塚家具は自分で作っているわけではなくて、いろんなところから仕入れているわけなので、その仕入れの目利きというのを、海外で良いものを見つけて、安く仕入れて、それをニトリよりも少し高いくらいで売るということをすれば、ニトリは嫌だという需要をある程度取り込めたのではないかと思います。そういった動きがなかなか見られなかったというところも、敗因の1つでしょう。