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東芝、経産省に泣きつき株主に圧力。日本の癒着企業を投資家が見限るワケ=栫井駿介

妨害工作の方法と詳しい経緯

まずは一番の敵であるエフィッシモを懲らしめてくださいという風に、仲の良い経産省に告げ口をします。

しかし経産省も、なんでもかんでも外為法とそう簡単にはいきません。改正されたばかりですし、下手に外為法を乱発してると、さすがに外国人投資家からの信用を失ってしまうということになりますから、これだけでいちゃもんをつけるのは簡単ではありません。

ところが東芝も引き下がらず、何とかして欲しいということを言います。

経産省としても東芝という大企業が、こんな大変な状況になってしまっては困るなという風にも考えたのかも知れません。この後、行動に出ることになります。

ちなみにこの時には東芝は業績不振によって、東証1部から東証2部に落ちていたところでした。それで何とか東証1部に復帰しようと頑張っていったところです。これで東証1部に復帰できないということになると、経産省としては嫌だなという印象を持っていたのかもしれません。

仮に株主提案が通って、現在の取締役が落ちてしまったり、新しい取締役が入ったりすると、一層掻き回されて、1部上場が流れてしまう可能性もありましたから、それは経産省としてはあってはならないという風に考えたのかもしれません。

では、どういった行動に出たのかというと、経産省としてはこの3Dというファンドに遠回しながら、コミュニケーションを取りましょうというような形で打診しました。

そこで言ったとされていることが、報告書に書かれていますけれども「隣が大火事の時に横でバーベキューしていると、それでは済まないことになることもある」と、非常に婉曲的な表現を使いました。

どういうことかというと、3Dはエフィッシモに比べると大人しいファンドではあります。東芝の一番の敵と目しているのは、村上ファンド系のエフィッシモなのですが、例えばこのエフィッシモは村上ファンド系と言いながら、本籍をシンガポールに置いているので、外国人投資家ということになります。

そこで経産省がエフィッシモに対して外為法を発動して、売却命令を出したり、今後日本での投資活動を難しくするようなことをしたら、3Dは同じように株主提案を出していますから、あなたのファンドもタダでは済まない可能性がありますというような、一見すると脅しとも取れるようなことを言ったという風にも言われています。

ハーバード基金にも裏の手を伸ばす経産省

またもうひとつ、ハーバードの基金があります。

アメリカの大学というのは積極的に基金を運用して、大学の運営資金に当てているのですが、ここに対しては経産省が直接行ったのではなくて、経産省の幹部であるM氏という人が個人的な繋がりも使って、働きかけたという風に言われています。

ところがこのハーバードの反応としては、後々ロイターの記事などでも出てくるのですが、M氏に対して「HMC関係と関係のない人物から、東芝の選挙に関して望んでもないミーティングの要請を受け、礼儀としてミーティングに応じたが、そのやり取りは内容も時期も極めて不適切なものであるとわかり、投票しないことにした」と発言しています。

これが東芝からきていたなら、適切な会話ということになるかもしれません。けれども、東芝とも直接関係のない経産省の幹部がいきなりミーティングしようと言ってきて、しかも今まさに株主の議決権を争っている直前のところで、こういう風にしてくれと働きかけてきたというのは、不適切と言わざるを得ない。「圧力を感じた」と言われてもおかしくないということで、天下のハーバードですから、毅然とした対応を取ったということになります。

ただ、結果としては投票を棄権したのですが、棄権したことがプラスに働いたということにもなっています。

なぜならもしこのハーバードが株主提案の方に賛成に回っていたら、もしかしたら通ったかもしれないからです。ということから、ここで投票させなかったというのは、意図としては上手くいったとも言えるかもしれません。

しかし、話はこれで終わりません。

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