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米・中露戦争に新局面。中国の自滅、インドの豹変で軍事衝突リスクは臨界点へ=江守哲

もはや茶番?ウイグルめぐる共同声明に中国反発

戦争でさえもそうである。その最たるものがイラク攻撃である。自分たちのやりたいようにやるためには、理由を捏造してまでも行動に移す。それだけ、「えげつない」国なのである。

米国は様々な国を巻き込んで、中国包囲網の確立に邁進している。このことは、すでに当メルマガで解説したとおりだが、6月22日にオンラインで開かれた国連人権理事会でも、そのスタンスを明確にしている。このときは、日本や米国、欧州など40カ国超が、中国・新疆ウイグル自治区の人権状況について「深刻な懸念を抱いている」との共同声明を発表した。

このような共同声明が出るのはきわめて異例であろう。そして、当然のように、中国側からは批判的な発言が出ている。中国側は、「声明を代表して読み上げたカナダの人権侵害を調査すべきだ」とし、批判の応酬となったと報じられている。なかなかの茶番劇である。

さて、今回の声明では、「信頼できる報告によれば、新疆では100万人超が恣意的に拘束され、ウイグルやその他少数民族を標的にした監視が広がっている」などと指摘したという。そのうえで、「拷問や強制不妊手術、性的暴行、子供を親から引き離すなどの報告もある」としている。これが本当であれば、とんでもない話である。

そして、今回声明を発表した国々は、バチェレ国連人権高等弁務官らの現地訪問と調査を受け入れるよう中国に求めている。さらに、香港やチベットの人権状況についても懸念を示している。しかし、中国が現地調査を受け入れることはないだろう。それは、コロナウイルスの発症地とされる武漢でのWHOの調査動向を見れば容易に理解できるだろう。

都合の悪いことは徹底的に隠す中国

とにかく中国は、都合の悪いことを隠し、問題をすり替えるのが得意である。これでは多くの国の信頼を得ることはできない。覇権国家になる資格などもともとないのだが、その可能性も自ら放棄しているようなものである。習近平国家主席は「覇権を取りたいわけではない」としているが、それを真に受ける向きもいない。そこには警戒しかないだろう。

一方、対中政策はより軍事的な側面に昇華しようとしている。北大西洋条約機構(NATO)は6月14日、ブリュッセルの本部で首脳会議を開き、中国を西側諸国に対する安全保障上のリスクと認識し、軍事的野心に対抗する姿勢を示す共同声明を採択した。

時事通信社によると、共同声明は「中国が示している野心的で強引な振る舞いは、規則に基づく国際秩序、および安全保障に対するシステミックな挑戦になっている」と表明した。これは相当の重大事項である。バイデン米大統領は、中国の覇権主義と軍事拡大に対抗するようNATO首脳に呼び掛けていたが、最終的にこの方針が通った格好である。

米国を再び世界の中心に。トランプより危険なバイデン政権

バイデン大統領は、加盟国が攻撃を受けた場合に他の加盟国が反撃する集団的自衛権の行使を定めるNATO条約第5条について、「米国にとって神聖な義務」とし、「欧州は米国がここにいることを知っておいてほしい」とした。さらに、「NATO条約第5条が定めている通り、米国のNATO加盟国に対するコミットメントは揺るぎない」とし、「米国は戻ってきた」と発言した。

バイデン氏は、NATO脱退をちらつかせたトランプ前大統領とは一線を画す姿勢を鮮明にしている。

そのうえで、ロシアと中国を民主主義に組み入れようとする1990年代半ば以降の西側諸国の取り組みにも言及し、「両国はわれわれが望んだように行動していない」として、強い牽制を投げかけている。また、「中国とロシアはNATOを分断させようとしている」とし、米国はロシアとの対立は望んでいないとしながらも、「ロシアが有害な活動を継続した場合、NATOとして対応する」と表明した。

このように、バイデン政権は世界の中核に戻ることを明確に示し、その対抗馬にある中国をきわめて強い言葉と態度で牽制したことになる。これは歴史的な行動と言ってもよいだろう。

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