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米・中露戦争に新局面。中国の自滅、インドの豹変で軍事衝突リスクは臨界点へ=江守哲

米国と中国・ロシアの戦いはまだまだ終わらない。しかし、新たな大国であるインドが徐々に成長のペースを速めていくだろう。いまは仲間であるインドの豹変リスクもある。インドは中国やロシアと違うとはいえ、その可能性は低いとは言い切れない。(『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』江守哲)

本記事は『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』2021年6月25日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリファンドマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

中国の駐米大使が離任。米中緊張はさらに高まる?

米中対立は様々な形で取り上げられる。当初はトランプ前政権の経済対立だったが、いまはそれにとどまらず、広範囲にわたる対立が浮き彫りになっている。その象徴が、中国の崔天凱駐米大使の離任であろう。8年の任期を終え、中国に戻るという。まさに米中関係が緊張する中での発表である。

崔氏は駐米大使として、最長の任期を務めた。愛想の良い外交的態度で知られているという。実際に表立った行動を確認したわけではないが、期限がきたことや今後は強硬姿勢を見せる必要性が高まっていることから、交代となったのであろう。

時事通信社の報道によると、崔氏の後任には、習近平国家主席の信頼できる側近で、中国への批判に対して鋭く反論することで知られる秦剛外務次官が就くとの予想が報じられている。

秦氏は2014年から2018年まで習国家主席の儀典局長を務めている。06-10年と11-14年の外務省報道官時代には、強硬な姿勢で知られ、中国を擁護するためにしばしば辛辣な発言をしているという。

このような性格であれば、いまの米中対立で強硬姿勢を示し、米国に脅しをかけるにはうってつけの人物といえそうである。

バイデン政権で高まった「戦争リスク」

いうまでもなく、近年の米中関係は大きく変化している。トランプ前政権の政策により、米中関係は1979年の外交樹立以来、最も悪化していたといわれている。両国は貿易だけでなく、多くの問題で対立している。ハイテク分野に始まり、香港や台湾、新疆ウイグル自治区、そして南シナ海に至るまで、様々な問題が浮上している。

これらの問題が短期間で整理されることはあり得ない。長い時間がかかるだろう。

そして、最終的に戦争にまで発展するだろうか。その可能性は、バイデン政権になったことで、前政権時とは比べ物にならないほどに高まっていることだけは確かである。

激しさを増す「ハイテク戦争」

さて、米中対立の根本となった経済問題だが、その中でもハイテク分野は肝である。そのためか、米連邦通信委員会(FCC)は、華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)など、米国の安全保障に脅威とみなす中国企業の機器を国内通信ネットワークから完全に排除するための新規則を全会一致で採択している。まさに「ハイテク戦争」である。

この規則では、安全保障上の許容できないリスクをもたらす機器に関する今後のあらゆる使用承認は禁止されることになる。また、以前に承認した案件の取り消しも可能になる。これはかなり深い問題になるだろう。

FCCのローゼンウォーセル委員長代行は、「新規則により、わが国の通信ネットワークから信頼できない機器は除外される。われわれはこれまでファーウェイやその他中国企業の機器がFCCの承認手続きを通じて米国で使われる余地を残してきた。したがって、今回はその機会を閉じることを提案している」としている。

FCCの見解はこれまで以上に明確かつ明快になっている。今年3月には、FCCが2019年に米通信ネットワークを守るために制定された法律に基づき、中国企業5社を安全保障上の脅威に認定している。

ちなみに、新規則の対象となるのはファーウェイ、ZTE、海能達通信(ハイテラ・コミュニケーションズ)、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)とされている。中国の中核的ハイテク企業を狙い撃ちしており、当然のようにダメージを受けることになる。

中国外務省の趙立堅報道官は、「米国は証拠も示さず、引き続き国家安全保障と国家権力を乱用して、中国企業を抑圧している」とし、「国家安全保障の概念の拡大解釈と、経済問題の政治化をやめるよう改めて米国に求める」としている。しかし、米国の政策には根拠のないものが多い。あくまで「実行する」ことが主目的であり、理由は何でもよい。

そのようなロジックで政策を決め、運用している。証拠など必要ないのである。

Next: 攻撃するのに証拠は不要。米中の溝は日々拡大している

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