「今日の中国は、明日の米国」
中国は、新型コロナウイルスの発生源であると同時に、世界に先駆けてパンデミックが収束した国でもあります。一定の制限はあるにせよ、いち早く通常の経済状況に戻った国です。
その中国で見られるのが、景気減速の兆候です。中国のサービス部門のPMI(購買担当者景気指数)は、国家統計局発表の6月同部門PMIは53.5と前月比1.7ポイント低下、財新/Markitの同数値は50.3と前月比4.8ポイントの大幅低下となりました。また、金融当局は1年2ヶ月ぶりの「金融緩和」を行い、景気を「下支え」しようとしています。
※参考:中国人民銀行「預金準備率」引き下げへ 17兆円規模市場供給か – NHKニュース(2021年7月9日配信)
米国をはじめ、現在の世界的な株高を支えているのは、金融緩和による溢れるマネーと景気回復への期待です。しかし、先んじてコロナの収束を迎えた中国では、すでに景気が腰折れしている可能性があるのです。
今日の中国は、明日の米国。米国でもコロナの収束で景気が盛り上がりつつありますが、これがいつまでも続くのでしょうか。
人が飽きるのは案外早いものです。これまで抑えつけられていた反動でぱーっと騒いだあとは、何事もなかったかのようにもとの生活に戻っていくでしょう。
そうなると、少なくとも今年想定されている「年率6.9%」のような高成長が継続できないことは明らかです。
「スタグフレーション」は起きるか?石油ショックの1970年代に学ぶ
ここで問題となるのが、インフレの状況です。現在のインフレは、需要よりも供給側の要因によって引き起こされています。生産や物流の混乱によって、企業間取引の価格が上昇しているのです。これはやがて消費者物価にも反映されるでしょう。
さらに状況を悪化させるのが、米中対立やESG投資です。
米中対立では、世界の大手企業が世界生産の2割を占める新疆綿を調達するのが難しくなっていますから、供給不足により衣類の価格上昇をもたらす可能性があります。
また、ESG投資では石油が目の敵にされているので、多くの企業が油田開発や生産に及び腰になるでしょう。これも原油価格の上昇の可能性を引き上げます。
供給側からくる物価上昇は、景気回復とはリンクしない形で起こります。すなわち、景気が回復しないのに、物価だけが上がる「スタグフレーション」が発生するリスクがあるのです。
実際にそれが起きたのが、1970年代の石油ショックです。原油価格の上昇により、景気が悪化する中で高率のインフレが発生しました。
同時期の株式市場には冬の時代が訪れ、「株式の死」が到来します。