株式市場は新たなリスクを意識し始めました。問題となっているのは「本当に期待されているほど景気が回復するのか」という点です。その試金石となるのが、中国の状況です。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
現在の金利低下が示すのは「景気後退懸念」
先週の日経平均株価は軟調な推移となりました。中期トレンドとしてはこの数ヶ月弱含みで、年初から3月頃の上昇分がほぼ帳消しとなりつつあります。
株価が軟調な要因は、米国における長期金利の低下にあると言われています。
「おいおい、これまで金利の『上昇』を警戒していると散々言ってきたじゃないか。下落しているのに株価が下がるのはおかしいだろう」という声が聞こえてきそうです。
確かに、FRBが金利の引き上げ、すなわち金融緩和を終わらせるなら、株価は下落する可能性が高いと、これまでも度々申し上げてきました。その考え方は今も変わっていません。
しかし、今回の金利低下は、FRBの動向とは別の要因で発生したと見られています。市場は新たなリスクとして景気後退を懸念し始めたのです。景気後退懸念は、安全資産への逃避という観点で国債価格の上昇=金利の低下をもたらします。
中国で景気腰折れの兆候
ここのところ、新型コロナウイルスのデルタ株流行により、世界で再びパンデミックへの警戒感が高まっています。特に日本ではワクチン摂取が欧米各国に後れを取り、東京オリンピックに向けて再び緊急事態宣言が発出されるなど、ネガティブな要素が多くあります。
ただし、先週末に株価が下がったのは日本だけではありません。米国も同様です。その米国では、ワクチン接種を希望する成人のほとんどはすでに摂取したとみられます。ワクチンの効果が低いとされるデルタ株は依然として脅威ですが、なお一定の感染予防効果があり、重症化も緩和するとされています。以前ほど恐れるべきものではないのです。
問題となっているのは「本当に期待されているほど景気が回復するのか」という点です。その試金石となるのが、中国の状況です。