資源エネルギー庁によると、今年の8月は全国7エリア(東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国)で最大需要発生時の予備率が3.8%と見込まれており、2017年以降最も厳しい見通しとなっています。必要最低限な予備率が3%と言われていますので、かなり逼迫した状況です。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)
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※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2021年7月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
この夏、日本の電力不足が懸念されている
資源エネルギー庁が2021年5月25日に出している「2021年度夏季及び冬季の電力需給の見通しと対策について」という資料の中では、今年の8月は、全国7エリア(北海道、九州を除く、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国の7エリア)で最大需要発生時の予備率が3.8%と見込まれており、2017年以降最も厳しい見通しとなっています。
予備率(供給予備率)とは、電力需要のピークに対してどの程度の余裕があるかを示す指標です。
電力の安定供給上、必要最低限な予備率が3%と言われていますので、かなり逼迫した状況です。
なお広域的な(極地的ではない)予備率が3%を下回る見通しとなった場合に逼迫警報の発令や、節電の要請をするとされており、それらの対応後も予備率が1%を下回る見通しの場合、計画停電を検討するということになっています。
LNG不足で電力需給が逼迫
また、昨年から火力発電の供給力が下がっていることも、注目すべき点だと思います。
2020年夏に稼働していた火力発電設備で、休廃止や計画外停止などにより、2021年度に供給を見込めない火力発電所は、大手電力だけで約830万kWにもなります。
CO2問題で新規の火力発電所の建設がなかなか難しいことと、原発についても基本的に稼働させづらい環境(新規の原発建設なんてもっての外というという雰囲気が形成されています)が、今の状況を招いています。
昨年の12月から今年の1月にかけて、LNG不足で電力不足に陥る事態があったのは、記憶に新しいところです。
中韓などの国がコロナ禍から回復し、経済が回り出したことで一気に電力需要が増え、LNGの供給を絞っていた環境でLNGが買われ、価格も高騰しました。
その結果、LNG不足による電力需給の逼迫が発生しました。
なお現在の日本の電力供給における電源別割合は以下のとおりです。(2020年暦年速報値)
LNG火力 35.4%
石炭火力 27.6%
石油 2.0%
その他火力 9.9%
原子力 4.3%
水力 7.9%
太陽光 8.5%
バイオマス 3.2%
風力 0.9%
地熱 0.3%
世界的なCO2削減の流れのなか、一番厳しい環境に置かれているのは石炭火力です。
金融機関が融資対象から外す動きもあり、今後、石炭火力施設を増設していくのは困難になっていくでしょう。
そうしますと火力発電は、現状ではLNG依存率が極めて高い状況になります。
LNGの多くが中東諸国等からの輸入に頼っており、CO2削減の件を置いておいたとしても、安全保障上の観点から過度にLNG火力に依存する体制は問題があります。
そうは言っても、石炭、石油による火力発電は今後増やすことは極めて困難なので、火力発電はLNG依存状況が続くわけですが(水素やアンモニアなどの新しい技術が稼働して普及するまでは少なくともそういう状況が続きます)、それを補っていくのが原子力と再生可能エネルギーになるかと思います。
日本の場合は、東日本大震災の影響により、原子力に対して世論がかなり厳しいという諸外国と比べて特殊な事情があり、原発の新設が進めにくい土壌があります。