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国が勧める「NISA」の真実。非課税にしてまで政府が手に入れたいもの=俣野成敏

真の目的は「株価維持」か

「老後の資産形成」「新規需要の掘り起こし」といった目的もさることながら、織田さんが考えるNISA導入の真の目的とは「株価を維持させるための資金源としてではないか?」というものです。

総務省統計局が発表している「家計調査報告(貯蓄・負債編)2020年平均結果(2人以上の世帯)」によると、50歳未満の世帯では、負債が貯蓄を上回っており、負債超過となっているのに対して、70歳以上の世帯の純貯蓄額(貯蓄-負債)は2173万円と、どの年代よりも多くなっています。

NISAは、高齢者の豊富な資金を投資に向けさせるためのもの、というワケです。

「株式を上場させている企業側にしてみれば、株価が上がることで企業価値も上がります。企業価値が上がれば融資も受けやすくなり、資金が潤沢になることで、ビジネスを優位に進めることができます。当然、企業関係者も自社株を多く保有していますから、株価が上がれば自分たちの資産も増えます。

上場企業が経済活動をしていく上で、株価の維持は非常に大切な要素だと言えます」(織田さん談)

参加者を増やして市場活性?株価を下げられない日本政府

こうした直接的な経済活動に、NISAがどこまで貢献できているのかは定かではありませんが、少なくとも参加者が増えることは、金融市場の活性化にもつながります。

長引く金融緩和政策の中で、日銀やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も日本株を大量に購入しており、万一、株価が下落しようものなら、彼らの資産も減ることになってしまいます。

要は、「株価は下げるに下げられない」状態なのです。

金融庁の調べによると、2020年12月末時点の2つのNISA口座開設数は1,523万2,308口座で、買付額は21兆7,075億2,671万円でした。

NISAは少額口座とは言え、それでもこれだけの資金が金融市場に流れ込んだことになります(金融庁HP「NISA・ジュニアNISA利用状況調査、令和2年12月末時点(確報値)」)。

いつの日か、日銀も、GPIFも、資金を引き上げなければならない時がやってきます。そのような時に、株価を買い支える資金源の1つとして、国はNISAがその一翼を担うことを期待しているのではないでしょうか。

Next: 金融機関にとって旨味は少ない。なぜNISAをアピールする?

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