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経済より権力の習近平、中国株下落は日本をどこまで巻き込むか?迫る中国“住宅バブル”崩壊=斎藤満

巨大民間企業は危険

こうした政権基盤が揺らぐ中で、IT企業など、大手の民間企業が強くなると、政府の統制が効かなくなり、中央政府の統制力を弱めます。

基本は国有企業、国有銀行のように、政府が直接管理する形で支配し、経営や労働力も政府の支配下にとどめたい意向です。

ところが、巨大IT企業では、もともと反政府の上海系出身の企業が多くなっています。

しかも彼らが米国市場などで自由に資本調達できるようになれば、政府の統制が効かなくなる恐れがあり、最終的にはアメリカナイズされ、民主化の原動力になりかねない面があります。

従って、彼らを政府の目の届く範囲に押しとどめ、タコ糸でつなぎ留めておく必要があります。それが米国での上場規制などにつながっています。

ところが、中国経済の成長のエンジンは、まさしくこれら巨大IT企業などのハイテク分野です。

政府はこれら成長の原動力となる企業をコントロールするために締め付けを強化し、自由な資金調達もできないようにすれば、成長エンジンは弱くなります。

もともと非効率な国有企業を、単に政府の管理の目が届くというだけで温存し、彼らを優遇すれば、中国経済の成長力を低下させます。

住宅高騰が止まらない

さらに中国政府の矛盾は拡大します。

中国の景気維持に利用してきた住宅建設が、今や住宅価格が年収の10倍以上になり、一般市民には高嶺の花となりました。

しかも投機を煽り、投資目的で購入する人が増えて、工事が追い付かず、未完成のまま放置される高層住宅が増えました。この高すぎる住宅価格が国民の不満の一因との理解から、政府は住宅価格の抑制に動きました。

しかし、日本のバブルを研究したという政府は、中国の住宅バブルを潰すわけにもいかず、中途半端な規制、規制緩和を繰り返しているために、未だに住宅価格の上昇を止められません。

一方で誰も住んでいない、未完成住宅が廃墟の様に荒れ放題となっている様も報じられています。

教育費の高騰が社会問題に

これと並んで政府が問題視しているのが教育費の高騰です。

政府はかなり前から一人っ子政策をやめ、最近では3人目まで認める方針を示しました。生産年齢人口の減少を止め、またいずれ兵力が必要な時に戦力を確保するうえでも、若年人口の減少は避けたいはずです。

ところが、政府の狙い通りには出生数が増えません。その原因の1つに、子どもの教育費が高騰していることが挙げられています。長い間一人っ子政策を続け、しかも男の子選好が続いてきたために、婚期の男性が相対的に余剰となり、結婚条件として高学歴、家付き、カー付きが求められるようになりました。

このため自分の子どもには良い教育を与えようとする親が、教育に金をつぎ込みました。その結果が、教育コストの高騰です。

政府は出生率の妨げになる教育費を強制的に引き下げようとしたために、教育市場が大混乱となっています。そのために却って教育が受けられない人々が増えていると言います。

こうした政策の混乱もあって、IMF(国際通貨基金)は、今年の中国の成長予想を、従来の8.4%から8.1%に引き下げました。

Next: 政権維持のために自ら住宅バブル潰し?迷走する習近平

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