テーパリング後も上昇へ
繰り返しになるが、テーパリングがすぐに始まるわけではないと知って、金曜日のS&P500とナスダックは2日ぶりの史上最高値を更新した。8月半ばに史上最高値をつけてから調整していたダウも上昇した。
テーパリングが始まった後はどうか?
私は、引き続き上昇すると見ている。何故なら、株式投資は重要な「資金」運用の手段だからだ。
テーパリングが始まるまで、今後も市場を取り巻く「資金」は月間1,200億ドルと、コロナ最悪期の規模で増え続ける。テーパリングが始まっても、最大限に緩めている蛇口を「徐々に(テーパリング)」締めていくだけで、資金は溢れ続ける。
つまり、どこかで運用しなければならない。だからこそ、これまで債券価格は史上最高値水準まで買われ、株価は最高値を更新し続けてきたのだ。

※参照チャート:米連銀のバランスシート
ここで、インフレ懸念があり、利上げが観測されるようになると、債券運用が機能しなくなる。利上げなどの金融引き締めが始まると、今度は債券からの資金が株式に流れ込むことになるのだ。
日欧のマイナス利回りは言うに及ばず、米国債の1年0.06%、2年0.22%、5年0.80%、10年1.31%、30年1.92%でも、インフレ率を勘案すればすべてバブルで、利上げが観測されるようになるとすべて売られると見ていい。
一方で、代替投資としての不動産投資は価格が高すぎて実需が見込めないうえに、ホームレス急増という問題を抱えているため、ここからの伸びは限定的だと見るべきだ。
「米株はバブル化しているとも言えない」
テーパリングが始まるときは、デルタドロップが底なしとなる時ではなく、ダブルボトムとなる時だ。景気回復は株価を押し上げる。また、1972年からのデータでは、インフレヘッジは金ではなく、S&P500だったと証明されている。
また、最高値を更新中だとはいえ、米株はバブル化しているとも言えないのだ。
8月25日までの週に米株ファンドからは64億6,000万ドルの純流出となった。米大型株ファンドは47億4,000万ドルの純流出。米国の中小株ファンドも純流出だった。
また、信用取引の買い残も減少している。これは株式市場がまだ冷静であることを示唆している。
これを弱気の始まりと見ることもできるが、弱気でも株価が下がらなければ、また買われることになる。資金に余裕があるからだ。
一方で、オプション市場はコールが買われていて、こちらは強気だ。もっとも、デルタドロップやテーパリングを懸念して現物買いには慎重(資金流出や買い残減少)で、コールの買いはそれでも上げた場合のヘッジだとも見なせる。この場合は買い余力の温存を意味する。
自社株買いは増加中だ。特にバイデン政権によりM&Aに慎重にならざるを得ない大手ハイテクが積極的に自社株買いを進めている。デルタドロップで先が見通せない場合は、設備投資には慎重になるが、豊富な資金で自社株買いをすれば株価が上がり、株価連動の経営陣の報酬も増えることになる。これは投資家抜きの株価上昇要因で、コロナ禍までの米株上昇の主力でもあったのだ。
このように資金運用という観点から「テーパリングと米株」を見てみると、米株以外の他の何が買える?という妄想を抱いてしまうのだが。
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※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2021年8月30日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。
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『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2021年8月30日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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