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本当は怖くないテーパリング。いざ米緩和縮小が始まっても米国株は上昇へ=矢口新

住宅価格上昇で住宅ローン地獄へ

先週発表された米7月の個人消費でのPCEデフレーターは前月比+0.4%、前年比+4.2%だった。コア指数は前月比+0.3%、前年比+3.6%だった。

米第2四半期のGDP改訂値でのPCEデフレーターは前期比年率+6.5%、コア指数は+6.1%だった。米連銀のインフレ目標は年+2.0%内外での安定なので、いずれも大幅に上回っている。

もっと深刻なのは住宅価格の上昇だ。米7月の新築住宅販売価格中央値は前年比+18.4%の39万500ドルと、過去最高を更新した。中古住宅販売価格中央値は前月比-0.8%、前年比+18%の35万9,900ドルだった。

米第2四半期の中古一戸建て住宅販売価格中央値は前年比+23%の35万7900ドルと過去最高だった。183都市圏の約94%が2桁の伸び率となった。前期の89%から加速した。

価格が高騰した結果、住宅販売の伸びが鈍化、米7月の住宅着工件数は前月比7.0%減の年率153万4,000件となった。また、住宅ローンの1件当たりの平均金額が40万2,440ドルと過去最高を更新した。結果として家計の債務が急増している。

つまり、金融緩和政策による超低金利と資金供給を受けて住宅価格が急騰した結果、購入できない人が急増し、購入できた人も大きな債務を抱え込むことになったのだ。

家賃滞納者の急増

さらに深刻なのが、家賃を支払えない人々の急増だ。

「立ち退き禁止令失効で、南部諸州の借主たちが最も脆弱に。ほとんどの住居立ち退きに対する全国的な禁止令が7月末で失効したことで、将来的に低所得賃貸者たちの強制退去が広がりかねない段階に入った。特に南部諸州で大きな打撃となりそうだ。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、パンデミック期間中の経済的困窮により家賃を支払えない何百万もの借主を保護するために、2020年9月に立ち退き禁止令を成立させた。CDCは支払猶予期間を3度延長した」

※参考:Eviction Ban’s Expiration Leaves Renters in South Appearing Most Vulnerable – WSJ(2021年8月1日配信)
※参考:Eviction Ban’s Expiration Leaves Renters in South Appearing Most Vulnerable(最低賃金労働者は、米国のどこに行っても家賃を払えない) – WSJ(2021年7月15日配信)
※参考:New York Is Pushing Homeless People Off the Streets. Where Will They Go?(ニューヨークはホームレスを街から追い出している。どこに行けばいい?) – The New York Times(2021年8月2日配信)

支払猶予期間は再延長されたが、米国の弱者に合わせた経済政策が、一面では弱者を追い詰め、新たな弱者を産む結果となっているのだ。

Next: テーパリング後も上昇か。「米株はバブル化しているとも言えない」

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