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菅政権は「安倍の尻拭い」15課題をそのまま残して終焉へ。消費税撤廃こそが日本復活の切り札だ=矢口新

安倍前首相が残した15個の課題

前首相の安倍氏は連続在任2,822日、第1期と合わせれば在任通算3,188日と、ともに歴代最長の記録を塗りかえた。このことは、過去2~30年の日本経済がパッとしないとすれば、歴代最大の責任があることを意味する。とはいえ、アベノミクス下の景気回復期間は71カ月と、戦後最長とされた「いざなみ景気(2002年2月~2008年2月)」の73カ月にあと2カ月に迫る長さだった。

もっとも、いざなみ景気もアベノミクスも、ともに落ち込んだところからゆっくりと時間をかけて回復しただけで、後世に誇れるものを残したわけではない。それどころか、今後の日本にいくつもの大きな課題を残すことになった。

菅首相は、そうした歴史に残る前首相の課題を引き継ぐことになった。どんな課題か、思いつくままに列挙してみる。

1. 膨大な累積財政赤字
2. 膨大な公的債務残高
3. 税収増が見込めない税制
4. このままでは事実上崩壊する社会保障制度
5. 少子高齢化対策
6. ほぼ限界にまで緩和した状態の金融政策(残された政策は中立か引締め)
7. 消滅した短期金利商品
8. 機能を失った国債市場
9. 30数兆円の日銀の株式保有残高
10. 空洞化、インバウンド頼み、消費増税、コロナ対策でダメ押しした景気悪化
11. 大廃業時代
12. 貧富格差の拡大
13. 米中本格対立を見据えた外交
14. ウィズ・コロナと今後の疫病対策
15. 猛威を振るいはじめた温暖化への対策

1つ1つが、語りだしたら止まらないような大問題ばかりだ。

「税収増が見込めない税制」に変えたことがすべての始まり

こうした課題に向き合ってきた安倍氏が連続在任記録を更新したその日に辞任を考えた気持ちが理解できるような気がする。同氏自身が2,822日かけて、第1期と合わせれば3,188日もかけて悪化させてしまった問題を、短い残りの任期でどうやれば好転できたというのだろう。その意味では、日本の首相職は官房長官として前政権を支えてきた菅氏が引き継ぐべき「要職」であったと言える。

本書の主題は、社会保障費の財源とされるはずの消費増税が、増税による景気の悪化を通じて社会保障費をかえって増やしてきたこと。一方で、財源となる総税収を減らしてきたこと。これが財政の巨大な累積赤字や、膨大な公的債務の主因になり、社会保障制度の維持を脅かしていると指摘することだ。

さらには景気の悪化を通じて企業の競争力を低下させ、労働環境を悪化させ、貧富格差の拡大につながったとも見ている。

またそうして悪化した景気を刺激するため、副作用の弊害が甚大なマイナス金利政策や、将来的な国の信用を失墜させる通貨の乱発、財政ファイナンス、中央銀行による民間企業の株式保有などにつながり、日本の金融政策が機能を失ったことも指摘している。

私自身がこれらの図表を分析して得た結論は、税制1つで国が栄えも滅びもするということだ。日本は1989年度から「税収増が見込めない税制」に変えた。これが上記に挙げた15の課題の大半を作ってきたことを、図表データをもとに解説する。

このことは税制さえ高度成長期、バブル期のようなものに戻せば、まともに経済成長する日本に戻すことができることを強く示唆している。具体的には消費税の撤廃と、所得税の累進課税率の拡大、法人税率の引き上げだ。こうして、税収が増える税制に戻すことなしには、日本の社会保障制度は崩壊してしまうのだ。

社会保障制度の維持は他人事ではない。誰もが将来は年金の受給者となる。健康保険は今でも使っている。誰も失業保険の世話にならないとは断言できない。仮にそうした給付の対象となることがなくても、現時点で誰もが社会保険料を支払っており、今のままでは保険料の値上がりは避けられないのだ。政府の大借金を民間が穴埋めさせられる日が迫っている。

本書があなたにとって、日本の制度への理解を深める手助けとなることを願っている。
※参照:『日本が幸せになれるシステム 65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方』(著者:矢口 新/刊:Kindle Edition)

Next: 日本復活には「消費税撤廃」をメインとした税制改革しかない

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