fbpx

JR東海は割安で買い時?新幹線頼みで業績低迷、期待の“リニア”は救世主か死神か=栫井駿介

年間2,500億円の減価償却が利益を圧迫

さらにはこれに投資していますから、その分損益計算書に対しては、減価償却にという形で下押し要因となり得るわけです。

5兆円を投資したとすると、償却の方法は色々あるのですが、例えば平均的に20年で定額償却したとすると、5兆円割る20年ですから、年2,500億円の減価償却費用が発生してしまうということになってきます。

ちなみにJR東海の経常利益が2019年3月期6300億円ですから、これに対して減価償却費2000億円以上ということになると、少なくても3分の1以上押し下げてしまうということになってしまうので、その点だけ見ても現在のPERだけで判断できないというところがあると思います。

利益に関してはさらにここに金利が乗っかってきますから、さらに押し下げられることになってきます。

また現在のキャッシュフローでこの借金を返済しようと思うと、配当をほとんど払わなかったと考えても、40年ぐらいかかるのではないかというように見えるわけです。

となるとリニア以外に、例えば不動産で投資したりとか、そういう身動きがなかなか取りにくくなってきます。

さらに投資家の目線で言えば配当を払うより先に、借金を返済しないといけないという観点になってしまいますから、配当はそんなに期待できなくなってしまう可能性があります。

現にJR東海は、リニアが決まる前ぐらいから配当を増やしているのですが、他のJR東日本や西日本に比べて出し渋っています。

これが今後も続く可能性があることになってきます。

リニアに期待できず、長期投資には向かない

結論としては大枠で言うならば、私は今リニアをやるというのは、人口もこれから増えない中で、株主から見た時の投資判断としては、決して望ましいものではないのではないかと思います。

なぜならリニアは借入金のリスクとか、金利上昇リスクとかを増やしてしまいますし、そもそも開業時期が未定というのは大きなリスクですし、減価償却費や借入金の利息なんかを通じて利益の下押し要因となってしまうということです。

さらに仮にリニアが出来たとしても、それ自体が売り上げに大きなプラスをもたらすものではないのではないかというところです。

さらに言えばリニア以外の芽が見当たりません。

JR東日本や西日本だったら、リニア以外の流通とか不動産、そういったものをやっているので、仮にコロナ禍で鉄道の利用者が減ったとしても、そっちの方で挽回できる可能性があります。

ところがJR東海は新幹線一本に絞ってきたことによって、その部分が非常に脆弱です。

そうなると、このコロナ禍で出張需要というのが減ってしまうことで、単純にそれだけマイナスになるのではないかと考えられます。

また先ほど説明しました借金が増えすぎると配当も期待できなくなってしまいます。

これは株価を上げにくくする要因であることも間違いありません。

以上を踏まえますと、いくら現在の指標があっても、今後業績が引き続き伸びていくような 絵というのがなかなか描けません。

むしろマイナス要因のほうが多いのではないかというように見えるわけです。

短期的にはコロナからの戻りで上がるということももしかしたらあるかもしれませんが、一方では借金が増えることはJR西日本と同じように増資をして、財務の健全性を改善させなければならないというフェーズがどこかでくる可能性があります。

したがって長期投資家としては長期でここに投資するメリットというのは、見出せていない状況があるわけです。

もっと言うならば、すでにもう後戻りできない状況かと思うのですが、国策的な意味もありますから、簡単に引くこともできないと思うのですが、もし許されるなら色々考えるとリニアを撤回してもいいぐらいなものではないかと見えています。

もちろんこの先どうなるかはわかりませんけれども、私だったら投資は見送ると思います。

(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)


つばめ投資顧問は、本格的に長期投資に取り組みたいあなたに役立つ情報を発信しています。まずは無料メールマガジンにご登録ください。

※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

【関連】ドン・キホーテ(PPIH)株は今が買い時?32期連続増収増益、成長カギ握る海外進出の勝算は=栫井駿介

【関連】ロボアドバイザーは手数料の無駄?それでも大多数の投資家に有益である理由=栫井駿介

【関連】「自宅は資産」は幻想。住宅ローンを抱えリストラと死の宣告を待つ者たちへ=鈴木傾城

image by:YMZK-Photo / Shutterstock.com
1 2 3 4

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2021年9月5日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問

[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー