エヌビディアが抱えるリスク
ではリスクはないのか言うともちろんそんなわけはありません。
それは競合、特に業界最大手のインテルが大きな敵として立ち塞がることになるかと思います。
実は先ほどの発言をしたのがインテルのCEOであるゲルシンガー氏なのです。
当時はインテルの社長ではなく別の会社の社長をやっていたのですが、その彼が今CEOとして腕をふるっているわけです。
すでに各国あらゆるところに巨額の投資を行って、研究開発と製造を行っています。
これまで世界の半導体業界を牛耳ってきましたから、お金はあります。
そして設備も自ら製造する力というのを持っています。
そこに対して技術者を雇えば同じような物が作れないとも限りませんし、また既存のサーバーとかPCの親和性を考えると、インテルが一手ににGPUまで含めて担ってしまうというのは一つの脅威になりうることが考えられます。
アメリカの会社では設計開発の上の人が、高いお金を払って移籍するのが結構行われているのです。
それがインテルにはできてしまうのです。
さらには製造はTSMCに依存しているというところもリスクです。
ファブレスメーカーですから、TSMCに依存しているわけですが、もしTSMCに何らかのこと、例えば地政学的リスクによって製造が難しくなったり、使えなくなることになると、エヌビディアはどうすることもできなくなってしまいます。
その点インテルは自社で製造能力まで持っているので、一日の長があるとも言えるかもしれません。
もちろん外に依存しているからこそ、製造は考えずに設計開発の方向に集中できるメリットもありますから、一長一短というところではあります。
ソフトバンクが売ったArmsを買収予定
さらにエヌビディアは先ほど出てきたモバイル時代を席巻したArmの買収を予定しています。
ここにArmを売ったのがあのソフトバンクグループなのですが、ソフトバンクグループからArmを買うというところで、現在は保留になっていて独占禁止法上の審査が行われています。
特にその審査が集まっているのが中国です。
中国の当局がこの合併を認めないのではないかと見られています。
Armは設計だけをする会社なのですが、中国としても設計図を中国が使えないということになると、今まで中国でもかなりのスマートフォン製造していますが、そのスマートフォンが同じように製造出来ないということになってしまうわけです。
もしアメリカが中国への輸出を禁止するとか、そういった話になったら、今までのような高度なスマートフォンが作れなくなってしまいますからダメージは計り知れません。
それでArmの買収に待ったをかけているのです。
Armはもともとイギリスの企業で、直接的な米中対立の影響を受けるわけではなかったのですが、エヌビディアに買収されてしまうと、米国企業ということになりますから、やはり米中対立の影響を受けやすくなっています。
エヌビディアとしてはこの買収が待ったをかけられるということになると、4.2兆円もかけて買収していますから、経営的には一時停止ということを受け入れざるを得ないというところになってきます。
ちなみにArmの買収ですが、ソフトバンクグループはArmを売却した対価として、現金またはエヌビディアの株式で受け取ることになっています。
おそらく株式で受け取ることになるでしょうから、実はこのエヌビディアの動向は日本のソフトバンクグループにも強く関連しているということになるわけです。
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