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近くて遠いドル年初来高値【フィスコ・コラム】

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ドル・円の上値の重い値動きが続いています。米連邦準備理事会(FRB)がなかなか金融引き締めに踏み切れず、重要な水準である110円台を維持するのは難しいようです。年初来高値までそう遠くないものの、新高値を期待する声はあまり聞こえてきません。


パウエルFRB議長は先月のジャクソンホール会合での講演で、景気回復に向け明確な進展が続けば、緩和政策の縮小を年内にも開始するのが適切と前向きな見解を示しました。一方で、新型コロナウイルス・デルタ株のまん延を短期的なリスクと指摘。また、資産買い入れの段階的縮小(テーパリング)は利上げの早期実施を示唆するものではないとし、利上げを急がない方針を強調しています。


そうした慎重姿勢を受け、ドル・円は心理的節目の110円を挟んだ値動きが目立ちます。足元で発表された企業景況感や個人消費、インフレに関する経済指標は、パウエル議長の発言を裏付けるように低調な内容が散見されます。それに反応して米長期金利の低下が進み、ドルを下押し。8月11日には110円80銭まで値を上げたものの、111円には届かず、そのまま109円台に失速してしまいました。

ドル・円の年初来高値は7月2日に付けた111円66銭(日銀データ)。その日は米6月雇用統計の発表を前に改善の期待が高まり、ドル買いが先行します。英中央銀行総裁によるハト派的な見解を受けポンド売りが強まったこともドルの支援材料となりました。しかし、昨年3月のコロナ危機の最中に付けた111円70銭台が射程圏内に入ったものの、結局その水準を意識した売りが強まり、次第に遠のいています。


市場関係者からも、目先の年初来高値の更新や112円台への上昇を見込む声が聞かれなくなりました。確かに、欧州中銀(ECB)には一部に強気な主張もありますが、利上げ実施はまだ先とみられるほか、イギリスやオーストラリアなどほとんどの主要中銀は当面、緩和政策を維持せざるを得ない状況です。そうなれば主要通貨は対ドルで買いづらく、ドル選好地合いは継続しそうです。


FRBは9月21-22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、現行の緩和的な金融政策を維持する公算です。ただ、テーパリングや利上げの重要性に言及する見通しですが、時間的な距離は縮まらないでしょう。タカ派的な見解は期待できず、金利高・ドル高は限定的とみられます。半面、NY株式市場は強気相場からやや調整に向かっているもようで、ドルは円買いに下押しされながらもリスクオフの買いが想定されます。


しかし、米国債利回りの低迷で金利高は期待できず、ドルの押し上げ要因にはなりにくいのも事実。また、アメリカの貿易赤字が過去最大を更新し続けていることも、ドルの下押し要因です。今年の春先以降、ドル・円の値幅はわずか4円あまり。下値は堅いものの、上値の重い値動きが今後も続くのかもしれません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


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