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Jトラスト Research Memo(5):既存事業の成長を図り、企業価値を高めるためのM&Aにより収益拡大を目指す

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■Jトラスト<8508>の成長戦略

IFRS転換が遅れたことに加え、韓国及びモンゴル金融事業では負ののれんの処理や当局の規制強化の影響、東南アジア金融事業では不良債権処理の影響、投資事業ではGL関連損失処理の影響などから、結果として前中期経営計画(2016年3月期~2018年3月期)は予定通りには進まなかった。現在、新たな中期経営計画の発表はないが、会社として投資家に中期的な利益目標を示すことは非常に重要であると弊社では考える。

当面は日本金融事業及び東南アジア金融事業を中心に成長を図る。また、韓国金融事業においては、JT貯蓄銀行の売却を中止しており、次の一手が注目される。

事業再編に伴い獲得した資金を、既存事業とのシナジーが期待できる事業へ投資を行うことで、グループ全体の収益拡大を目指している。それに伴い同社グループでは、今後の成長戦略として、以下のように計画している。

(1) 日本金融事業
日本金融事業では、信用保証事業の拡充と債権回収事業の強化によってさらなる収益の拡大を図り、同社グループ全体の業績をリードする計画である。

子会社の日本保証は、金融機関の審査基準が厳格化していることなどから、当面はアパートローンの保証残高は大幅な増加を期待しにくい環境にあるものの、新築のみならず首都圏・大阪圏の収益性の高い中古・リノベーション再販の取り扱いを開始し、引き続き良質な物件に限定して保証を拡大する計画だ。これに加え、さらなる保証残高(合計3,000億円)を積み上げるため、土地の仕入れからアパートの建築、投資家の開拓、販売、ローン保証までを自前かつワンストップで行う取り組みを開始した。好立地で商品価値の高いアパートを提供することで、購入する投資家のみならずローンを提供する金融機関からも好評だ。

さらに、ソーシャルレンディング保証ビジネスの拡大を図り、業界での保証ビジネスの確立を目指す。これまでに4社と保証提携しているが、現在も複数のソーシャルレンディング業者と保証提携交渉中である。さらに、不動産のクラウドファンディングである「不動産特定共同事業法」に基づいた買取保証ビジネスも開始しており、2020年12月に第1号保証案件を販売した。同社の不動産に対する目利き力を生かすビジネスであり、投資家は買取保証が付いているため安心して投資することが可能になる。

パルティール債権回収では、2021年12月期も金融機関とのネットワークを生かし順調な買取実績で推移しているものの、今後も信販系大手カード会社等からの債権買取を推進する計画である。コロナ禍で他のサービサーが債権買取の入札を手控えるなか、同社は事業拡大のチャンスと捉えて積極的に入札に参加しており、取引先金融機関は一気に倍増している。

(2) 韓国及びモンゴル金融事業
当面の韓国及びモンゴル金融事業は、JT貯蓄銀行、債権回収業のTA資産管理(株)(以下、TAアセット)、モンゴルにおける割賦事業のJトラストクレジットNBFIとなる。収益の柱であるJT貯蓄銀行の売却を中止したことから、韓国及びモンゴル金融事業の成長戦略が練り直される可能性があり、その動向を注視したい。

なお、JT貯蓄銀行の業績は、2021年1月~9月の9か月間でみると、営業収益が10,624百万円(前年同期比20%増)、営業利益が2,916百万円(同43%増)である。2022年12月期の業績を予想する際には、JT貯蓄銀行が売却されれば、これらを年率換算した数値が剥落することが見込まれていた。しかし、今回の売却中止により、こうした来期の業績面の不安材料が取り除かれたとみられる。

(3) 東南アジア金融事業
BJIの今後の戦略としては、戦略的パートナーシップを結べる業務提携及び資本提携を検討するほか、財務的に苦しい金融機関からの債権買取やM&Aを検討するとともに、大手企業への貸出を伸ばすために当該顧客とパイプラインを持つ役員らを招聘し、M&Aがなくても成長できる体制を構築する計画である。JTOでは、パンデミック下において事業環境の悪化が顕著であるため、業態転換を含めた事業の方向性を様々な角度で検討する。JTIIではコロナ禍により不良債権の増加が予想され市場が拡大する見込みであるほか、ターンアラウンドアセットインドネシア(韓国のサービサーであるTAアセットの子会社)では新たな取り組みとしてフィンテック企業から債権回収業務を受託した。このほか同社グループでは、2021年8月にジャカルタの6ヶ所でワクチン接種センターサービスを開催するなど、同国の経済回復に向けても積極的に取り組んでいる。

加えて2019年12月期より同社グループに加わったJTRBは、カンボジア商業銀行42行中10位の資産規模(2018年12月末当時)を持つ資産内容の良い優良銀行である。安定的に年間25~30億円の営業利益を計上しており、業容(預金、貸出金)拡大方針の維持によるグループへの利益貢献が期待される。JTRBでは、従来は超優良顧客のみを対象としていたが、今後は法人では大企業から中堅企業まで、また個人は住宅ローンを中心に顧客層の拡大を図る一方で、COFを意識した低金利預金の獲得を強化することで安定収益の確保を図る。このほか、新規顧客層の開拓強化、大企業との取引拡大、富裕層向け商品や各種普通預金商品のラインナップの充実、モバイルアプリ、ネットバンキングのサービス拡充などを計画する。カンボジアの銀行セクターは年間15〜20%の成長が継続しており、今後もJTRBの安定収益の計上によって、東南アジア金融事業の収益改善を下支えすると期待される。

(4) 事業ポートフォリオのさらなる再編
これまで同社グループでは、日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業で安定的に利益を確保する一方で、中期的には成長可能性が大きい東南アジア金融事業を原動力として、持続的な成長を目指す方針であった。ただ、コロナ禍により世界各国で経済環境が急変し、先行き不透明感が増しているなか、手元流動性の増強と有利子負債の圧縮を進めるとともに、事業ポートフォリオの改善を進めている。今後は日本金融事業の拡大と東南アジア金融事業の早期黒字転換に取り組むが、韓国における経営戦略については注視が怠れない。同社では、売却により獲得した資金を、主に企業価値を高めるためのM&Aに活用する予定であり、既存の成功事業をさらに成長させることができる事業、既存事業とのシナジーを期待できる事業、金融機関と取り組める事業などへ投資する考えだ。藤澤社長の強力なリーダーシップのもと、同社グループの成長を促すための次の一手に注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)


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