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2022年最凶リスクは中国「ゼロコロナ政策の失敗」。習近平の権力私物化が世界経済を凍らせる=勝又壽良

中国の成長はまもなく止まる?越えられない2つの壁

ユーラシア・グループの「世界10大リスク」の第4位は、中国の国内政策である。

ここでは、経済面に限定して掘り下げてみたい。中国人民銀行の計測した22年の潜在成長率は、5.5%である。この潜在成長率に収まらないところが、22年経済運営の厳しい問題点である。

具体的には次のような課題がある。

1)「ゼロコロナ」による防疫偏重策が、経済活動を圧迫する。
2) 不動産バブルの崩壊で、住宅購入熱が急速に醒めている。

(1)は、経済活動の阻害が個人消費へ大きく影響する。西安市では、コロナを恐れるよりも食糧不足が深刻という事態だ。西安市の人口1,300万人が、ノーマルな消費活動を奪われる影響は、決して小さくない。このロックダウンは、他都市でも今秋の5年に一度の共産党大会まで行なわれるであろう。そうでなければ、習氏の国家主席3期目という「慶事」は覚束なくなる。「民の生活」よりも、習氏の出世が先行される社会である。

(2)は、不動産バブルの崩壊である。中国恒大の経営破綻は、その象徴的な事件である。過剰債務を抱えて経営継続が不可能な事態に陥ったのだ。債務が累積する過程を振り返れば分るように、次第に利益が捻出できなくなってきた結果である。それは、住宅需要が頭打ちになってきたことで、債務返済が滞ったのである。

住宅が、投機対象になったことにより中国経済の不健全化が始まっていた。この背景には、中国経済の閉鎖性が大きな要因である。中国は資本自由化を認めていない。これが、国内投機を引き起した背景にある。過剰な通貨が、住宅投機に向かったのである。

IMF(国際通貨基金)は2016年10月、中国人民元をSDR(特別引出権)へ昇格させた。その際に中国は、人民元の自由変動相場制と資本自由化への移行を約束したが、いまだに実行せず反古にしている。最初から、その意思がなかったに違いない。中国は、SDRという「名誉」を得て、米国ドル・EUユーロ・英国ポンド・日本円と肩を並べたいという単純な見栄であったのだ。GDP世界2位の通貨が、未だに自由変動相場制や資本自由化していない未成熟通貨であることが、不動産バブルを招いた要因である。今後も、閉鎖経済で行くのだろう。

中国が、不動産バブルに落込んだ金融的な背景を見た。ここでわかることは、中国の歪な金融システムの存在である。これによって生み出されたのが、長期の不動産バブルと言える。それだけに、正常化には大きな経済的な障害を伴うであろう。

習近平の権力基盤を占う好機

今年の実質経済成長率が、どの程度に収まるのか関心が集まっている。

中国人民銀行による今年の潜在成長率は、既述の通り5.5%である。これは、正常な経済運営において実現可能な成長率である。だが、すでに明らかにしたように、「ゼロコロナ」という経済無視の防疫偏重経済運営と、不動産バブル崩壊による過剰債務処理の後遺症という新たな要因が加わる。そうなると、潜在成長率並の成長率は実現不可能という情勢にある。

中国政府のシンクタンク、中国社会科学院は昨年12月、2022年の経済成長率について、5.3%程度を見込むと発表した。これによって、20~22年の平均年間成長率を5.2%と見ている。社会科学院は、今年の経済成長率を潜在成長率以下に設定した。潜在成長率との差である「0.3ポイント」は、「ゼロコロナ」と不動産バブルの後遺症というのであろう。

中国指導部では、前記のような潜在成長率以下の予測と異なり、「5.5~6%」とする案が浮上している。中国景気は停滞感を強めているが、21年の「6%超」より小幅な引き下げにとどめるという観測である。今秋は、5年に1度の共産党大会を控えている。暗い経済見通しを出せないという背景がある。

この裏には、不動産バブル崩壊で地価の値下がりが起こり、地方政府が財政的に行き詰まっている事情がある。地方政府の財源では、4~5割が土地売却益である。この売却益が減っているのだ。地方公務員は、すでに一律3割前後の給与引下げを通知されている。こういう事情だけに、厳しい経済見通しを立てられないという事情が潜んでいる。

中国指導部が、今年の経済見通しを立てる際、前述のように「5.5~6%」という高目の成長率を採用すれば、習氏の政治的権力が揺らいでいる結果という指摘がある。現実には、社会科学院の「5.3%」が妥当である。習氏は、それで押し切れず政治的に妥協せざるを得ないのでないかというのだ。

習氏の政治力を占う意味で、今年の成長率目標は大きな意味を持っている。

Next: 中国指導部の思惑どおりにならない初めての危機

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