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お手本は『マクロス』?実用が始まった中国バーチャルキャラクターの最新トレンド。日本とは異なる現実世界への溶け込み方=牧野武文

映画『アリータ:バトル・エンジェル』の大ヒットで開発が進む

しかし、個人的な見立てですが、2019年2月に映画『アリータ:バトル・エンジェル』が中国で公開され、大ヒットとなったことが大きかったのではないかと思います。北米での興行収入を超えてしまい、映画『アリータ』を最もよく見たのは中国人ということになりました。それまでのSF映画の興行記録は、中国SF界の宝ともいえる劉慈欣原作の『流転の地球』でした。

『アリータ』は、『アバター』を監督したジェームズ・キャメロンが製作をしていていて、制作スタジオもアバターと同じです。アバターも中国では大ヒット映画となりました。

この『アリータ』は、主人公がサイボーグの少女という設定です。この少女が、バーチャルキャラクターで描かれました。俳優の演技をパフォーマンスキャプチャーし、その動きを実写の中に合成するという手法です。素晴らしいのは、このサイボーグの表現が、やはり実写と比べると違和感があることです。表情などに人間とは違う、不気味の谷の残滓のようなものがあるのです。それを感じるがゆえに、サイボーグであるということが実感できる。スタッフは、この実写との違和感を意図的に利用して、サイボーグを表現したのだと思います。映画の始めのあたりはサイボーグの違和感を感じますが、見進めるともに気にならなくなり、最後には実写俳優と完全に融合をしている。映画を見るという体験の中で、バーチャルキャラクターに対する個人の感覚が変容していく体験も得られるようになっています。

このヒットに刺激をされた研究者・エンジニアは多かったのではないでしょうか。

▼『アリータ:バトル・エンジェル』予告編

▼アリータのメイキング。パフォーマンスキャプチャーの手法について解説されている。モーションキャプチャーとの違いにも触れている。

多くのエンジニアに影響を与えた日本のコンテンツ

この『アリータ』の原作は、日本の漫画『銃夢』(木城ゆうと)です。中国のバーチャルキャラクター関連の本を読むと、多くの研究者・エンジニアが日本から刺激を受けていることが書いてあります。

ひとつは1982年のアニメ『超時空要塞マクロス』で、アニメとしての内容も好評でしたが、この中の最初は脇役であったリン・ミンメイの声優をシンガーソングライターの飯島真理さんが担当し、劇中歌『愛・おぼえていますか』がヒット曲になりました。

これは当時の中国人にとってはびっくりするようなできごとだったようです。「世界で最初のバーチャルシンガーである」と説明している記事もあります。しかも、萌えとテクノロジーを初めて連結した事例であると説明している記事もあります。

▼中国のバーチャルキャラクターの起源は『超時空要塞マクロス』にあるようだ。

そして、2007年のボーカロイド「初音ミク」の登場です。ここから、中国のサブカル系ネット文化と萌え文化が始まっています。日本のアニメを違法に共有するAcFunというサイトがありましたが、人気が上昇したたためアクセス数が増えすぎたびたび落ちるようになりました。そのため、代わりのサイトをつくる必要があると有志が作ったのが初音ミクの映像を共有するMikuFunsでした。これが今日の「ビリビリ動画」になっていきます。

さらに、日本のYouTubeを中心としたVチューバーの盛り上がりです。これも大きな刺激になっています。

Next: 中国と日本のバーチャルキャラクターはどう違う?

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