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お手本は『マクロス』?実用が始まった中国バーチャルキャラクターの最新トレンド。日本とは異なる現実世界への溶け込み方=牧野武文

男性人気を意識したテレビ局発のバーチャルアナウンサー

テレビ局もバーチャルアナウンサーの活用を始めていますが、テキスト系メディアと比べると精度や機能が高いものになっています。テレビ局はスタジオ設備があり、アナウンサーもいて、バーチャルアナウンサーを使う意味があまり強くはありません。

一方で、人間のアナウンサーのタレント化が進み、「このアナウンサーが好きだから」という理由で、報道番組を見る人が増える傾向があります。中央電視台(CCTV)では、王氷氷(ワン・ビンビン)という女性キャスターの人気が高く、王氷氷が取材をする報道特集は視聴率が好調です。

このような人気アナウンサーの一人として、実験的にバーチャルキャラクターを起用しているようです。

中央電視台のウェブメディアである央視網では、「小c」というバーチャルキャラクターを採用しています。開発は百度です。

見ていただけるとわかりますが、顔の造形も男性に人気が出ることを意識しているように感じます。声質、話し方の抑揚も手間がかけられていることを感じます。また、音声とのリップシンクも精密にシンクロされていて、従来のバーチャルアナウンサーよりも完成度が高いものになっています。

▼央視網の小c。精度の高いバーチャルアナウンサーになっている。

一方、湖南衛視では、Vチューバー方式のバーチャルアナウンサーを採用しています。バラエティ番組で、他の出演者と会話のやり取りができます。AR合成により、撮影した映像にアナウンサーを合成することであたかもアナウンサーがステージにいるかのような映像をつくります。

また、音声は人が担当し、パフォーマンスキャプチャーで表情、動きなどを再現します。いわゆる中の人がステージ脇にいて、演技をしてやり取りをしているタイプのバーチャルキャラクターです。

このような「中の人」がいるタイプのバーチャルキャラクターはリアルタイムでの利用が可能になります。生放送の司会として、バーチャルキャラクターを使うということも可能になってきます。

▼湖南衛視の「小ヤン」。AR合成であたかもステージの上にいるかのような映像がつくれる。パフォーマンスキャプチャー方式であるため、他の出演者との掛け合いも可能になる。

最も精度が高いのはテンセントのVR記者

一方で、新華社はVR記者も公開しています。「小諍」で、開発はテンセントが行なっています。見た目のリアルさという点では、最も精度が高いバーチャルキャラクターではないでしょうか。体の動きなども演者によるパフォーマンスキャプチャーではなく、アルゴリズムにより動かしします。

この小諍は、中国が打ち上げた宇宙ステーションに同行取材をする記者という建前になっています。もちろん、本当に宇宙ステーションに行けるわけではありません。宇宙ステーションの精密なCG=デジタルツインをつくって、その中を小諍が歩いてレポートをしてくれるというものです。現実の映像もうまく使われ、どこからどこまでがつくりもので、どこからが本物なのかがだんだんわからなくなっていきます。

▼テンセントは映画やゲームでバーチャルキャラクターを使う技術を持っているため、非常に精度が高いキャラクターになっている。
http://www.news.cn/2021-09/03/c_1127824371.htm

公的機関で活用できるバイリンガルのバーチャルアナウンサー

また、音声合成技術のリーダー的企業である科大訊飛は、自社の技術を活かして、マルチリンガルのバーチャルアナウンサーを開発しています。デモ映像では、英語、中国語、日本語、韓国語の4ヶ国語を話しています。

注意していただきたいのは、どの言語を話すときでも声質が同じであるということです。元となる音声データから特徴を抽出し、それで音声合成をしているのです。日本語の話し方はイントネーションに不自然さが残っていますが、聞き取るのに問題はありません。

科大訊飛はマルチリンガルバーチャルアナウンサーとしてセールスを始めていますが、空港や駅、公的機関、銀行、観光地などでの案内説明として活躍するのではないかと思います。

▼4ヶ国語に対応した「小晴」。公共交通の案内などで活躍をしそうだ。

Next: メタバース普及の鍵を握るバーチャルキャラクター

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