足元のウクライナ情勢を受けての株価下落は、元々予想していた「3月頃の25000円前後、3万ドル前後の安値」に、着実に歩を進めているに過ぎません。株価見通しを変える必要を全く感じません。だいぶ前から「2022年前半に主要国の株価が下落する」という見通しを主張し続けてきましたが、それがあと一押しで終幕にたどり着こうとしています。次第に、安値の予想時期までの時間が短くなるとともに、株価指数の実際の水準が安値めどに近づいています。もう一息だけの株価下落を売りで儲けようとするのではなく、いつどの水準で何を買うかを、ゆっくりまったり、楽しみに計画してください。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)
※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2022年2月25日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。
馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」2022/02/25配信「号外」より
2/24(木)に、ロシアがウクライナに侵攻を開始しました。ロシア側は「ウクライナ東部の、親ロシア派武装勢力が優勢である地域に住む、住民の保護が目的だ」と説明していますが、それ以外の地域のウクライナの軍事施設をミサイル攻撃している、とも報じられています。
このロシアの侵攻を受けて、日本市場では、日経平均が2/24(木)のザラ場で、年初来最安値の2万5,775.64円をつけました。引け値は2万5,970.82円とやや戻したものの、本稿執筆時(日本時間 2/24(木)19:30頃)の日経平均先物は2万5,800円前後で推移しています。
また、米国株価指数の先物価格の動向などからみると、今のところは、2/24(木)のニューヨークダウ工業株指数は3万2,400ドル辺りから始まりそうです。
外貨市場では、リスク回避的な投資家の姿勢が強まり、ほぼ全面的な円高となっています。ユーロが前日比で1ユーロ当たり1.70~1.80円ほど安くなっていることが目を引きますが、それでも全般に外貨相場が暴落している、というほどではありません。
原油価格はWTI先物が、前日の1バレル92ドル辺りから、現時点では100ドル前後で推移しています(以上の米国株価指数先物、外貨相場、原油価格なども、すべて本稿執筆時のものです)。
今後、市場は「ウクライナ情勢に限っては」、あまり日がかからずに、現在の最悪の情勢を織り込む(早晩主要国の株価指数は下げ止まる)ものと考えています。
リスクを織り込んでいた株式市場
これまで当メールマガジンで述べてきたように、筆者はウクライナ情勢がこうなる、と自信を持って先行きを予測する能力はないため、ロシア政治などの専門家による、ロシアが侵攻するかどうかについての両方の見解を、ご紹介してきました。
ただ、直近で投資家が揃いも揃って、「ロシアが軍事侵攻する可能性はゼロに決まっている」と決めつけていた、などということはなかったでしょう。つまり、軍事侵攻するとの展開は、いくばくかはすでに市場が織り込みつつあって、だからこそある程度は株価が軟調だったわけです。
「ロシアが軍事侵攻するとは驚愕の事態であって、株価指数が直近の水準から何割も暴落する」などということはありえないでしょう。
3月頃、日経平均は2万5,000円の一段安へ
ただ、そうしてウクライナ情勢の深刻化を、主要国の株価が消化しきったとしても、これまで解説してきた通り、3月「頃」にかけて、日経平均が2万5,000円「前後」、ニューヨークダウが3万ドル「前後」まで、一段安となる、という見解は、まったく変えていません。
その理由もまったく変わりません。当メールマガジンでは、1/30(日)付の第553号でその背景を解説しました。いまでも考えは同じなので、それをそのまま下記に引用します。
3月というタイミングが節目となりうると予想するのは、2つほどの材料があります。
まず、3/15(火)~3/16(水)には、FOMC(連邦公開市場委員会)が開催予定です。
これまで述べてきたように、FOMCないし連銀の金融政策の正常化自体は、深刻な株安要因ではありません。株安をもたらしているのは、繰り返しになりますが、これまでの超緩和に慣れ切った企業や投資家が、借り入れによる株式買い(企業の場合は自社株買い)など、リスク資産の価格押し上げ姿勢を強め過ぎていたため、それが普通の状態に戻る(正常化する)ことです。3月のFOMCで、連銀が利上げを想定通り実施するのかどうか、利上げするのならその幅はどうかなど、様々な不透明感を背景とした投資家の不安が、一段とリスク回避的な動きを強めるでしょう。そうしたリスク資産からの逃避行動が、3月FOMCまでに十分進めば、かえってFOMCがあく抜けの契機になることがありえます。
別の要因として、中国リスクに関連して、北京冬季オリンピック・パラリンピック(以下、両大会を合わせて「五輪」と表記)の日程が注目されます。オリンピックは2/4(金)~2/20(日)、パラリンピックは3/4(金)~3/13(日)の開催です。
中国にとって、北京五輪の成功は、当面の最優先課題と言えるでしょう。「東京は成功したが、北京は失敗した」ということでは、中国の国家的威信にかかわります(「東と北の違いだ」というジョークでは済まないでしょう)。
そのため五輪期間中は、米中対立、特に安全保障面に関する対立は、中国側からは避けると見込まれます。したがって逆に、北京五輪後は、南沙諸島「など」における軍事的緊張が高まる、あるいは米国による種々の経済面・投資面での対中制裁的な行動(既に米国は、中国企業の米国内での活動や、米国投資家の中国企業への投資を、様々に制約しています)に対して、中国が報復的な措置を拡大する、という展開がありえます。
それによる株価下振れが、3月頃(しつこいですが、「頃」は、かなりの時間的な幅をもってみてください)までに充分進めば、かえってその後の世界株価の反転につながるとも想定されます。
足元のウクライナ情勢を受けての株価下落は、元々予想していた「3月頃の2万5,000円前後、3万ドル前後の安値」に、着実に歩を進めているに過ぎません。株価見通しを変える必要をまったく感じません。
だいぶ前から「2022年前半に主要国の株価が下落する」という見通しを主張し続けてきましたが、それがあと一押しで終幕にたどり着こうとしています。次第に、安値の予想時期までの時間が短くなるとともに、株価指数の実際の水準が安値めどに近づいています。
もう一息だけの株価下落を売りで儲けようとするのではなく、いつどの水準で何を買うかを、ゆっくりまったり、楽しみに計画してください。
ちなみに、前掲の1/30(日)付のメールマガジンでは、日米の株価指数の下値メドについて、「実際の底値がどちらかと言えば上にずれそうか、それとも下に外れそうか、という点については、あえて予想すれば、日経平均は2万5,000円より下にずれる恐れが高いと予想します。一方ニューヨークダウは、逆に3万ドルより実際の底値が上になる可能性が高いと見込みます」と書きました。その見解も、以前と変わっていません。
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