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「円安は日本経済にプラス」は本当か?自国通貨安に苦しむ国が多数、日本も経済構造の変化で窮地に=斎藤満

世界中の中央銀行がインフレ対応に追われています。そして日本でも物の価格が上がっていますが、日銀はインフレを認めず金融緩和を継続するとしています。そんななかで円安は進行し、1ドル119円を超える水準となりました。この円安がさらに日本経済を傷つけていきます。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

【関連】なぜ中国は覇権国になれないのか。日本を抜き去る「少子高齢化」ほか三重苦で経済発展ストップへ=勝又壽良

※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年3月14日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

円安を招くインフレを認めぬ日銀

世界の中央銀行がインフレ抑制に懸命で、米FRBも利上げに踏み切りました。

その中で日本は、インフレが川上((輸入物価)から川中(国内企業物価)まで大きく上昇してきましたが、まだ川下の消費者物価にまではあまり及んでいないとして、日銀は政策変更の必要はまったくないと言い張っています。

このため、足元ではドル円が119円を超えて円安になっています。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

日本の経済力は50年前に逆戻り

先月、BIS(国際決済銀行)が今年1月の円の実質実効為替レートが67.55(2010年=100、数値が大きいほど円高)になったと発表しました。

これは固定相場だった1972年6月の67.49以来、50年ぶりの円安で、各方面から話題になりました。現在の円の実力は、50年前に1ドル300円を超えていたころと変わらないことになり、経済の実力が50年前に逆戻りしたともいえます。

名目の円相場が80円を割り込んだ1995年4月の実質実効レートは150台だったので、円の実力(購買力)は当時の半分以下になったことになります。

円安は日本経済にプラスか?

日銀の黒田総裁は、「円安は全体としてみれば日本経済にはプラス」と言い続けています。

そうであれば、95年からの大幅な円安は、さぞかし日本経済に大きな貢献をしたはずですが、この間、日本の1人当たりGDP(国内総生産)は世界のトップクラスからOECD(経済協力開発機構)38か国の中で23位に低下しました。

同時にこの間、世界を代表する企業トップ10から日本企業が姿を消し、「ジャパン・アズ・ナンバー1」と言われた世界は遠い昔となり、1人当たりGDPも賃金水準も韓国に追い抜かれました。「経済は一流」も遠い昔の話となりました。

これだけ実質円安になりながら、なぜ日本経済はじり貧となったのでしょうか。

Next: 円安が日本経済にプラスになるには条件がある

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