楽天グループの携帯電話事業「楽天モバイル」が、この4月から全都道府県で自社回線への切り替えを始めると報じられている。
今回発表された自社回線への切り替え対象都道府県は、岩手県、山形県、山梨県、和歌山県、島根県、高知県、長崎県、鹿児島県の8県。これにより全都道府県で、楽天モバイル回線への切り替えが順次進められることとなった。
いっぽうで、楽天モバイルによる設備が整わない地域において回線を貸す「ローミングサービス」を提供しているKDDIは、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、富山県、石川県、愛知県、滋賀県、大阪府、兵庫県における楽天モバイル向けの同サービスを、2023年3月末までに原則終了すると発表している。なお、同時期に終了予定だった千葉県と神奈川県は、楽天モバイルからの要望でサービスを継続することとなった模様だ。
携帯事業が足かせで過去最大の赤字に
今年2月に発表された2021年12月期の連結決算において、最終損益が1,338億円の赤字となるなど、過去最大の赤字となった楽天グループ。
それによると、楽天市場などのインターネットサービスは約1,075億円の黒字、楽天カードなどの金融事業は約891億円の黒字だったのに対し、携帯電話事業は約4,211億円の赤字と、やはり楽天モバイルの不振が大きく足を引っ張る格好となっているようだ。
今年2月にはMVNOも含めた契約数が550万を突破するなど、契約数は順調に伸ばしているとされる楽天モバイル。それがなぜ巨額な赤字となっているのかというと、急ピッチで進められている基地局整備によって発生している費用が大きな原因なのだが、さらに先述のKDDIから回線を借りるローミングサービスの費用も、かなり嵩んでいるという。
楽天モバイルとしては、自社回線への切り替えを急ぐことで、大きな負担になっているこのローミングサービスにかかるコストを、少しでも削減したいという思惑だ。
実際、基地局整備に関しては今年2月には屋外基地局が4万局超、全国の人口カバー率が96%に達したという楽天モバイル。ただ、SNS上にあがっている楽天モバイルユーザーの声を聞くとパートナー回線、つまりローミングサービスを提供しているKDDIの回線しか繋がらないといった声も少なくない。さらには、自社回線への切り替えが進んでいると思われるエリアでは、パートナー回線が使えなくなるいっぽうで楽天モバイルが圏外……といった状況もチラホラ聞かれる状況だ。
#楽天モバイル #楽天モバイル繋がらない #楽天モバイル被害者の会
楽天モバイルの通信無制限契約だが全くインターネット繋がらん。楽天回線カバーエリアの都市部なのに、パートナー回線しか繋がらん。この会社ヤバ過ぎん?サポートのチャットもまるで解決する気なし。良い子は契約しちゃ駄目よ。— たか (@large_pro) March 30, 2022
楽天モバイルがパートナー回線を掴んでたときは良かったのに、楽天回線に切り替わってから全然ダメ😭
というツイートしたら楽天モバイルからDM→カスタマーセンターから電話。ただっ広い畑だから近くに建物がないのに、建物はありませんか?の連続。— アップルレディ@お金の勉強中 (@fZqaSQc100DREiH) March 29, 2022
北24のアークスで買い物して、RARAポイントのアプリ会員のバーコード表示させようとしたら表示されない! 店内楽天モバイル圏外😰
パートナー回線どんどん使えなくなってる😰
楽天モバイル使い物にならない😰
そのうちレジでバーコード決済しようとしても圏外とかなりそう😰#楽天モバイル— aramord (@vrivrivrivrrvrv) April 4, 2022
今後、基地局の整備がさらに進んでいけば、次第と解消されていく事象だと信じたいところだが、当分の間はその過渡期だろうがゆえに、ユーザーからのこの手の声は今後もあがり続けそうである。
モバイルの黒字化を目指す楽天の見通しは甘い?
楽天といえば、ここ数年は会員向けの各種ポイントの還元率低下といった“改悪”の話が、ことあるたびに取沙汰されるが、この4月からもポイント付与が税込価格から“税抜”価格に変更となるほか、楽天保険の加入がSPUの特典から除外されるなど、さらなる仕様ルール変更が実施されている。
いわゆる楽天経済圏の住民の間でも、これら会員向けサービスのクオリティ低下は、ひとえに携帯電話事業が赤字続きなため……というのは、もはや共通認識となっている。それだけに、楽天モバイルが事業として軌道に乗ることを願う声も少なくない状況だ。
そんな声も受けてか、楽天側としても携帯電話事業に関しては、23年12月期中の黒字化を目指しているとのこと。具体的には、今回取沙汰されたローミングサービスにかかっていたコストの削減、さらに会員数増加に一役買った“プラン料金1年無料キャンペーン”の期間が終わったユーザーが課金対象となるなどの理由で、今後は徐々に経営状況の改善が見込まれるとしている。
ただ、そんな楽天サイドの見通しに対しては、かなり甘いのではといった見方も。そのお得ぶりが話題となった無料キャンペーンだが、その期間が終了してしまえば、他社のまた別のお得なプランに乗り換えるといった動きが出てくるのは当然のこと。しかも、繋がりにくいとの評判も少なからずあがっている状況であれば、それもなおさらといったところだ。
しかも解約に至らなくとも、今後は“0円運用”にするとの声もSNS上では多く見られる。これは楽天モバイルユーザーの間では有名なテクニックで、データ消費量を月1GB以下に抑え、さらに通話は自社アプリである「Rakuten Link」を使うことで、毎月のスマホ代が0円になるというもの。しかもSPUも「+1倍」になるということで、楽天経済圏の住民のなかでも実践している人は多いようだ。
このように楽天モバイル側が大いに当て込んでいる、いわゆる優良な課金ユーザーの増加は、なかなか難しそうというのが正直なところ。それどころか、自社回線への切り替えを急ぐことで、繋がりにくいという状況をさらに招けば、さらなるユーザー離れとなる可能性も無きにしもあらずということで、楽天モバイルとしては非常に難しい局面といったところだろう。
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