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バイデン大統領は金でインドの心を買えるか? 駐日インド大使の対中強硬発言とインドの対中露友好(2)

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◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「バイデン大統領は金でインドの心を買えるか? 駐日インド大使の対中強硬発言とインドの対中露友好(2)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

駐日インド大使が対中強硬的発言をしているが、インド外相は王毅外相が議長を務めるBRICS外相会議で対中露友好姿勢を表明。対米非難が目立つ。そこへアメリカが大型の対インド軍事支援をすることが判明した。

◆王毅外相が主催したBRICS外相会談におけるインドの姿勢
5月19日、議長国中国の王毅外相が主催して、「ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ」の外相がビデオ会議でBRICS外相会議を開催した。そのときに出された共同声明(※2)の中の関連項目だけを拾い上げると、以下のようになる。

一、外相たちは、多国間主義を再確認し、国連憲章の目的と原則を基礎とした国際法を支持する。主権国家が平和を維持するために協力する国際システムにおける国連の中心的役割を支持する(三条関連)。

二、外相たちは、国連安全保障理事会、国連総会などでウクライナ問題について表明された国別の立場を確認しあった。外相たちはロシアのウクライナとの(停戦)交渉を支持した(十一条関連)。

三、外相たちは、人権と基本的自由を促進し保護するために、国内においてだけでなく、全世界レベルで各国が全ての人類に対して平等な待遇と相互尊重の原則に基づいて協力し、人類運命共同体を構築すべきであることを再確認した(二十一条関連)。

四、外相たちはBRCSメンバーを増やしていくことを支持した(二十四条関連)。(以上、共同声明から関連項目の概略を引用)

そもそもBRICS外相会議にはロシアのラブロフ外相が堂々と参加しているわけだから、ロシアの主張も取り入れていることは明白で、その上で共同声明を出せたというだけで、すでに中国だけでなくインドもまた基本的にロシアに共鳴していることになる。

軍事攻撃に関しては中国もインドも賛同はしてないだろうが、かと言って、それを激しく非難するということはしていない。その事実を前提として少しだけ解釈を付け加えると以下のようなことが言える。

「二」に関して:停戦交渉を続けるべきだという点で一致しており、アメリカのように「ロシアがくたばるまで、叩きのめしてやれ」という思惑とは反対側にいる。しかし、私見を述べるならば、軍事侵攻をしているのはロシアなのだから、ロシア自身が侵略行為をやめれば済む話で、ロシア以外のBRICSメンバー国がロシアに対して「侵略をやめろ!」と言うべきだと思うが、それを「言わない」あるいは「言えない」ところに問題があり、「だらしない」としか言いようがない。

「一と三」に関して:これは「一国一票」の平等性を以て、国連で決めていくべきで、アメリカ一国が他国を制裁したり、「小さなグループ」を作って「第三国を排除する」という排他的論理で行動すべきではない、と主張していることを意味する。中国ではBRICS外相会議に際して、数えきれないほど多くのメッセージが出されているが、たとえば王毅が言った< 「小さなサークル」は世界が直面している「大きな挑戦」を解決できず、「小さなグループ」はこんにち世界が面している「大きな変動する情勢」に適応できない>(※3)などに現れている。しかも共同声明で、習近平の外交する—がんである「人類運命共同体」を入れたのは、BRICSメンバー国が、「中国を支持し、中国の外交姿勢に賛同している」ことを意味している。

「四」に関して:これはBRICS外相会議における王毅の演説の中の一つ(※4)に表現されている通り、「新興市場や途上国との連帯と協力」を強化していこうという主張で、世界は先進国によってのみ動かされているのではなく、先進国以外の国の数の方が圧倒的に多いので「BRICS+」を増やしていこうという論理に基づいた表現である。

◆インド外交部の発表
インド外交部は今般のBRICS外相会議に関して以下のような発表をしている(※5)。

——外相たちはウクライナの状況について話し合い、ロシアとウクライナの間の(停戦)交渉を支持した。 外所為たちは、紛争がエネルギー安全保障や食料安全保障に与える影響に懸念を表明した。外相たちは、国際機関および国連とその安全保障理事会を含む多国間フォーラムにおいて、発展途上国がグローバルガバナンスにおいて重要な役割を果たすことができるように、改革を推進し、開発途上国の代表を増やすことを求める声を支持した。(引用ここまで)

すなわち、インドはアメリカの一極主義と制裁外交に反対しているということになる。

◆アメリカの突然の対インド大型軍事支援
ところが、アメリカはインドのこの姿勢を変えさせようと、なんとインドに対して5億ドル(640億円)の軍事援助プランを準備していることがわかった。5月18日のインドのHindustan Times(※6)が伝えた。

どうやらアメリカは、インドのロシアに対する武器依存を減らすために、軍事援助パッケージを準備しているようで、関係者の話によれば、検討中のパッケージには5億ドル相当の軍事支援が含まれているとのこと。取引がいつ発表されるか、どのような武器が含まれるかは、今はまだ不明のようだ。

この取り組みは、ウクライナ侵略でロシア批判を躊躇しているインドに対して、バイデン大統領がインドを長期的な安全保障パートナーとして培っていこうとする大きなイニシアチブの一環だと、匿名のアメリカ高官が言ったとのことだ。

あのモディ首相が、「金」で心を動かすか、じっくり観察したいものである。


写真: 代表撮影/ロイター/アフロ

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202205/t20220519_10689666.shtml
(※3)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202205/t20220519_10689626.shtml
(※4)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202205/t20220519_10689631.shtml
(※5)https://www.mea.gov.in/press-releases.htm?dtl/35330/Meeting+of+BRICS+Ministers+of+Foreign+AffairsInternational+Relations
(※6)https://www.hindustantimes.com/world-news/us-to-offer-india-500-million-in-military-aid-to-reduce-dependence-on-russia-101652853517651.html

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