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貧困は遺伝する。なぜ低所得世帯の子どもは「一生」貧困のままで終わる危険性が高いのか=鈴木傾城

学歴を向上させるような雰囲気になっていない

金持ちの子どもが比較的「高学歴になりやすい」のは、教育費に何の問題もなく、ありとあらゆる教育サポートが為されるからだ。資質がなくても資質を伸ばす環境が用意される。

財力があれば、場合によっては学歴も資格も「カネで買える」ようになり、中身はともかく表面的には学歴や資格で「飾る」ことすらも可能になっていく。

しかし、貧困層は日々の生活をやりくりすることに精一杯で、子どもの教育に投資することができない。また、貧困層の環境も、学歴を向上させるような雰囲気になっていないことも多い。

国外では貧困層の子どもはみんな働きに出ており、教育に金や時間をかけるのは無駄だという意識もある。また、子どもたちも最初から上を見るのをあきらめる。

だから、貧困層では子どもにいくら資質があっても、その資質は眠ったままになってしまうことが多い。

もちろん、すべての子どもがそうなるわけではない。貧困家庭に生まれながらも凄まじい知性と能力で成り上がっていく希有な子どもたちもいる。そういう子どもたちを、私たちの社会は痛切に求めている。

しかし危険なのは、そういった「貧困を克服して成功した」という才覚を持ち合わせた成功者がでると「あの人ができたのだから成功できなかった人は自己責任」という言われ方をされて貧困がもたらす問題が矮小化されることだ。

貧困から抜け出して大成功する人もいるのだが、大部分は貧困家庭で生まれると貧困に飲まれて一生が終わってしまう。その日を生きるのに精一杯なのである。

子どもの時期に資質も伸ばされないで放置され、教育も学歴なく、その日暮らしのための仕事をするしかないのであれば、いつまで経っても這い上がることができないのが普通だ。

つまり、貧困者の子どもは自動的に貧困生活になる。そして貧困者の子どもは一生貧困のままで終わる。これを指して「貧困は遺伝する」と言われているのである。

「親の年収」と「子どもの学力」は比例する

日本の識字率は下がりつつあるのではないかと教育現場から声が上がっているのだが、それでも統計的に見ると識字率は100%に近い。日本では非常に教育の行き届いた社会だと言える。

しかし逆の見方をすると、日本では「字が読めるくらい」では何の自慢にもならず、もっと高度な教育が必要になるということでもある。

実は子どもの成績と親の年収は比例するというのは、すでに文部科学省の全国学力調査の結果から明らかにされている。一番分かりやすいのは、保護者の収入が多ければ多いほど、子どもの大学進学率が高くなる現象だろう。

単純に、大学に行くにも金がかかり、貧困層の家庭はそれを用意できない。それが長い目で見ると子どもたちの収入格差につながっていく。

Next: 貧困層の中で最もダメージが大きいのが母子家庭

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