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プーチンと習近平は「兵器飢餓」で新冷戦の敗者に。半導体不足で武器生産が不可能という前代未聞の事態に陥る=勝又壽良

中ロに厳戒体制敷く

NATOの「新戦略概念」の重要部分だけを要約する。

1. ロシアは同盟国の安全保障や欧州・大西洋地域の平和と安定に対する最大かつ直接の脅威。ロシアは強制や破壊活動、侵略、併合を通じて(周辺地域で)直接的支配を確立しようとしている。

2. 中国はわれわれの利益、安全保障、価値に挑み、法に基づく国際秩序を壊そうと努めている。中国とロシアの戦略的協力関係の深化は、われわれの価値と利益に反する。中国と建設的な関係を築くための扉は開かれている。われわれは、中国が欧米の安全保障に突き付ける体制上の挑戦に対応し、同盟国の防衛と安全を保障するNATOの能力を確保すべく、責任を持って取り組む。

前記2項目に若干のコメントを付したい。

(1)ロシアに対して、NATOは妥協の余地がないことを鮮明にした。有事には、6ヶ月以内に50万の兵力を以て対抗することを明らかにした。ポーランドに、米軍司令部を置いてリトアニア三ヶ国の防衛線を守る。

(2)中国に対しては、「準敵国」扱いにしている。中国の対応次第では、NATOが話合いを可能にすると高姿勢だ。中国が、中ロ枢軸の動きを強めれば、NATOは門を閉じると宣言している形である。

NATOが、中国までを巻き込んで警戒範囲を広げた理由は何か。

中国が、一帯一路プロジェクトを利用して世界中へ軍事拠点を作ろうと動いていることだ。中国海軍が、すでに北極圏まで活動範囲にしている点は、ロシア海軍と計らって欧州を攻撃する準備をしていると判断されたのだろう。NATOの先制パンチで、中国海軍は動きを止められる公算が出てきた。

NATOは、中国を警戒国に挙げた以上、太平洋地域の防衛にも関心を寄せている。今回のNATO首脳会議には、日本・韓国・豪州・NZ(ニュージーランド)の首脳を招待した。日本は今後、NATO理事会へ定期的に出席することになった。中国の動静をNATOの政策に反映させるシステムが出来上がったのだ。自衛隊とNATO軍が、それぞれの演習にオブザーバー参加できる枠組みも整えられた。

日本列島を周回し威嚇

中国海軍は最近、ロシア海軍と同一行動を取り日本列島を周回する威圧行動を繰り返している。日本が、怯むとみた浅はかな行動である。

中国は、日清戦争前にも英国から購入した最新鋭艦4隻を長崎まで2度も回航し日本へ圧力を加えた。これに奮起した日本海軍は、日本での建艦による軍艦で対抗。日清海戦は、清国海軍の惨敗に終り、戦場から無断で離脱する戦艦まで現れた。昔も今も、中国海軍は変わらない振る舞いをしているのだ。

中国軍には、相手国を意味もなく挑発する無鉄砲さがある。自らの軍備の大きさに酔った結果である。戦争は、軍備の量だけで勝敗が決まるものでない。戦略が極めて重要である。具体的には、多くの同盟国を持つことだ。同盟国のない国の戦いは、敗北するケースが圧倒的である。日露戦争では、同盟国のないロシア軍が、米英に支援された日本軍に敗北したのだ。

マティス元米国防長官は最近、CNNで興味ある発言をした。「米国には、『同盟国がある国は繁栄し、ない国は衰退する』との格言がある」と言うのだ。これは至言である。日本にもこれに類した言葉がある。戦国武将の毛利元就が、3人の子どもに教えた遺訓である。「1本の矢は容易に折れるが、3本まとめてでは折れにくい」。結束=同盟の力の強さを強調したものだ。

中国は秦の始皇帝以来、「合従連衡」を外交の基本にしている。「合従」(同盟)を嫌い、「連衡」(一対一の関係)に持ち込み、相手国を征服する戦術である。中国は、今なおこの外交戦術に固執している。唯一の例外は、ロシア軍への接近である。ただ中ロ間には、同盟が成立していないので、有事の際にロシア軍の協力する保証はゼロである。現に、ロシアのウクライナ侵攻でも中国は「精神的支援」に止めている以上、その見返りがないのは当然であろう。

こうなると、中国は有事の際にどこにも頼れる国がないことになる。

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