9月11日前後に転換点か?
そうした状況で、これらの目標を実現した後のロシアの行動を示唆する興味深い情報が、特にロシアのメディアによって報じられている。プーチンと比較的に近い関係にある外国の指導者の発言である。
7月14日、ロシアのメディアはセルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領の警告を掲載した。セルビアはロシアと近い関係にあり、ヴチッチ大統領も親ロシアである。ヴチッチ大統領は次のように警告した。
「何が待ち受けているかは分かっている。プーチンがセヴェルスク、バフムト、ソレダルで仕事を終え、スラビアンスク、クラマトルスク、アヴデフカの第二線に到達したら、すぐに彼は提案をするだろう。そして、もし彼ら(欧米諸国)がそれを受け入れないなら、- 受け入れないだろうが – 大混乱に陥るだろう。」
ヴチッチ大統領が言及した地名は、いま戦闘が続くドネツク州にある都市である。要するにこれらの都市をロシア軍が占拠し、東部ドンバス地方全体を占領した段階で、プーチン大統領は欧米諸国にある提案をするというのだ。
また、これと同じようなニュアンスのことをブラジルのボルソナロ大統領が発言している。
7月14日、ブラジルのボルソナロ大統領は、ロシアとウクライナの戦争を「解決」する方法を知っており、来週電話会談を予定しているウクライナのゼレンスキー大統領に提案を投げかけると述べた。
「私は自分の意見、思っていることを彼に伝える。この解決策を。どうすれば解決できるかは知っている。しかし、誰にも言わない」とボルソナロ大統領は記者団に語った。
「この件の解決策は、1982年にアルゼンチンがイギリスとの戦争を終結させたようになる」と、それ以上の詳細は明かさなかった。
ちなみにアルゼンチンとイギリスは、1982年に南大西洋にあるフォークランド諸島の主権をめぐって短期間の紛争を起こした。1982年4月、アルゼンチン軍が英国領の島々に上陸し、英国が奪還のために海軍の機動部隊を送ったのが始まりだった。しかし、装備の劣るアルゼンチン軍に勝ち目はなく、アルゼンチンは2カ月後に降伏した。
ボルソナロは7月18日にゼレンスキーと電話会談を予定している。最初に接触してきたのはウクライナ側であり、ボルソナロはすぐに電話を受けることに同意したという。
このような発言だ。具体的な内容はよく分からないものの、1982年の「フォークランド紛争」におけるアルゼンチンの解決のようになるということでは、ロシアは占領したウクライナの領土の支配権をウクライナに認めるように要求するのかもしれない。「1982年にアルゼンチンがイギリスとの戦争を終結させたように」とは、ウクライナがアルゼンチンのような立場で、ロシアによる領土の領有権を認めるということのように思う。そのように見ると、先のセルビアのヴチッチ大統領のいう「ある提案」の中身はこれであろう。
そして、ウクライナと欧米諸国がプーチンの提案を拒否した場合、ヴチッチ大統領は「大混乱に陥るだろう」という。
この「混乱」を示唆する発言がロシア国内から聞こえてきている。
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