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プーチン勝利宣言は9月11日前後か。日本で報道されないウクライナ軍の損害と本当の戦況=高島康司

ウクライナ軍の予想を上回る損害

しかし、ウクライナ軍の損害は一般的な戦況分析の予想を越えているようだ。

もちろんウクライナ政府は、損害状況を公式に発表していない。このメルマガの記事で何度も紹介したスイス軍参謀本部の元大佐でNATO軍の要員として2012年以来ウクライナ軍を内部からモニターしてきたジャック・ボーや、「アジアタイムス」の軍事専門家の分析、また「ロシア国防省」が毎日発表している戦況報告を地図で詳細に解説する「Military Summary」などのチャンネルを見ると、損害の大きさには驚かされる。

「アジアタイムス」などで活躍している軍事情報分析のスペシャリスト、スティーブン・ブライアンは、ウクライナからの報道として、開戦以来、ウクライナの前線に派遣された戦闘員の約8割が死傷または戦闘不能に陥っているという。

また報道では、ウクライナの若者の間では軍隊に入ろうという熱意はほとんどない。多くの若者が国を出て行ってしまった。兵士の交代要員は、兵士としての訓練も技術も持っていない新兵ばかりである。

またジャック・ボーは、7月上旬のインタビューで次のように述べている。

「現実には、ロシア側でもウクライナ側でも、死亡した兵士の数はわかっていません。欧米のメディアで語られているのは、ウクライナのプロパガンダによって流布された数字です。

しかし、6月上旬にゼレンスキー大統領がウクライナ軍の死亡率を公表し、1日あたり60~100人の兵士が死亡したと話しています。その1週間後、ゼレンスキー大統領の顧問であるミハイロ・ポドリアクは、ウクライナ軍は1日に100~200人の兵士を失っていると発言した。だが、1日あたり200から500人の死者が出ており、1日あたり合計1,000人の死傷者(死者、負傷者、捕虜、脱走兵)が出ているという分析もある。この数字が正しいかどうかは不明です。」

そして、実際に死傷者数はこれよりもはるかに高いとして、次のように言う。

「情報機関に近い専門家たちは、これらの数字は現実をはるかに下回っていると考えています。一方、ウクライナの数字は、ロシア軍の推定値よりもさらに高いのです。ウクライナ軍の死者は6万人、行方不明者は5万人という話もあります。しかし、この数字は現時点では検証不可能です。」

現在のウクライナ軍の総兵力は、20万9,000人の正規兵に準軍事組織の「領土防衛隊」や「アゾフ大隊」の生き残りを加えると、26万人ほどになる。もしジャック・ボーの言うこうした数字が正しいとすると、死者と行方不明者を加えると11万人、さらにこれに負傷者を入れると、ウクライナ軍の約8割、約20万8,000人が戦闘不能の状態であることになる。

他方、ウクライナ軍の発表によると、ロシア軍の死者は3万8000人に上るとしている。この倍の負傷者がいるとして、約7万6,000人が戦闘不能の状態だ。これはウクライナの発表なので少し割り引いて見たほうがよいだろうが、それにしてもウクライナ軍の戦闘不能者の数よりもずっと低い。

明かにウクライナは苦境に立たされている。ウクライナには予備役が90万人ほどいるので、予備役の召集が始まっている。一方ロシア軍の予備役は200万人である。まだ召集は行われていない。

Next: アメリカ大使館による退避勧告も。見えてきた今後の展開

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