アメリカ大使館による退避勧告
このメルマガでは何度も書いているが、ウクライナ軍の圧倒的な戦闘要員の不足から、NATO諸国がどれほど先端的な兵器で支援しようとも、戦況を逆転させるまでには至らない可能性が極めて高い。そして、ウクライナ軍は負けている理由をジャック・ボーは次にように説明している。
「根本的な問題は、ウクライナの指導者の作戦の進め方にあります。ウクライナ、特にゼレンスキーは、ダイナミックに戦場を駆け巡り、部隊を動かして優位に立つのではなく、「立って戦え」と命令しているのです。これは、第一次世界大戦中のフランスと同じである。これがウクライナとロシアの大きな違いであり、ウクライナは政治指導者が作戦を管理し、ロシアは参謀本部が作戦を管理する。このことが、失敗したウクライナのやり方を説明している。米軍でさえ、この問題を認識しているようです。」
このような、ウクライナ軍では現場を知らない政治指導者が作戦を管理しているのであれば、ウクライナ軍の苦境は深まるばかりだろう。
事実、この1週間、5月に再開されたキエフのアメリカ大使館は、驚くべきことに、ウクライナにいるすべてのアメリカ人に、大使館は支援を提供できないので、できるだけ早く「民間で利用できる地上交通機関」を使ってキエフを退去し、各自でそうするよう伝えている。同大使館はまた、アメリカ人に対し、大勢で、あるいは標的となりそうな場所に集まらないよう警告した。 キエフのアメリカ大使館は、ロシアの攻撃を明らかに恐れて、職員に退避するよう伝えているのだ。
さて、こうしたウクライナの苦境に変化がないとするなら、今後はどのような展開になるのだろうか?スティーブン・ブライアンやジャック・ボーはほぼ共通した見方をしている。
ウクライナ4州のロシア併合とオデッサ攻撃
それは、ロシアが占拠した東部のルガンスク、ドネツク、そして南部のジャポリージャ、ヘルソンの4州のロシア併合である。
ウクライナ南部ザポリジャー州のバリツキー占領行政長官は、秋口に同州をロシア領とするかどうかの住民投票を実施すると発表した。バリツキーは「地域」の定義をしなかったが、この発言は、ロシア占領下の南部地域を指していると思われる。
アゾフ海や黒海に面した南部地域は、現在ロシアがほぼ支配している。もし、この地域がロシアに併合されれば、西のケルソンからマリウポリ、そして国境を越えてロシアのロストフ・オン・ドンまでの都市がつながることになる。これらの場所はすべてM-14という幹線道路で結ばれている。
ロシアの支配下にないものの、ロシアが関心を寄せる主要都市はオデッサである。この都市周辺では、時折、砲撃が行われているが、まだ大きな戦闘は行われていない。
ルガンスクやドンバスの作戦では、ロシア軍はマリウポルを奪った後、南部のケルソン以北を中心に持久作戦を展開してきたに過ぎない。しかし、ロシアがこの地域を併合するためには、さらに前進してザポリージャを占領し、ウクライナ軍をケルソンから引き離し、オデッサへの陸上攻撃の可能性を開かなければならないだろう。
ウクライナは南方地域でのロシアの動きを止めようと懸命である。ウクライナ軍は、強力な武器である「HIMARS」を使用して、ロシアの司令部や武器庫への攻撃を強化している。
ケルソンとその周辺には、重武装したパルチザンが侵入している。これらの地域ではロシア語を話す人々が襲撃され、何人かが殺されたとの報告もある。ロシアがこの地域を強化した場合、おそらくウクライナ軍は苦戦を強いられるだろう。
このように、東部と南部の占領を固めながら、これらの4州をロシアへの併合を目標にしている。この目標の達成にロシア軍は動くはずだ。
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