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想定内のFOMC0.75%利上げ。市場を支配する“インフレピークアウト論”の鵜呑みは時期尚早か=新天地

FOMCの0.75%の利上げ発表を受けハイテク株は上昇。また、今後のインフレ圧力は弱まり、失業率は低いまま推移するとの見解を結果発表の中で示した。今のところ、市場はこの説を受け入れているが、実際にどうなるかは、まだわからないのが本音。
(『新天地の株式投資日記』)

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※本記事は有料メルマガ『新天地の株式投資日記』2022年7月28日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。実際に配信されたサンプル号もお読みいただけます。

プロフィール:新天地
祖父の影響で子どもの頃から株の売買を行う。証券会社で自己売買業務を経験後に退社、現在はデイトレーダー。メルマガでは主に脱初級・中級者向けに、東証・NYの市況(市場雑感)、相場の考え方、取引手法などを解説。一般に書かれることが少ない空売り戦略や取引アルゴリズムに関してもプレーヤーの立場から丁寧にフォローする。

FOMC発表前からテック株が大幅高

FOMC結果発表前から、マイクロソフトやアルファベットの決算を評価して、テック株に買い戻しが入っていたアメリカ市場だったが、FOMCで0.75%利上げが発表されると同時に、さらに上げ幅を拡大した。

なお、発表によれば0.75%利上げは満場一致という。

明らかにFRBは「需要を減らし過ぎないようにしながら、価格を抑えなければいけない」という綱渡りを強いられていることは承知の通り。

今日のFOMCの結果発表の中で「支出と生産の指標は軟化している」と、今後のインフレ圧力(の主要因)の弱まりを指摘する一方で、「雇用増加は堅調で、失業率は低いまま」と指摘。今後は以前予想されていたほどは、物価上昇を抑えるための金利上昇が大きくなくて済む、今金利を上げても、雇用が大きく崩れることもないと「いいところどり」であることを強調した。

市場も今日はその主張を認めて(本当に正しいかどうかはわからないし、0.75%利上げでインフレを抑え込めるかどうかは、確認するにはまだ時間がかかる)株価面では、ショートカバーや見直し買いで特に金利上昇に弱いとされるグロース株が大きく買い直されることになった。

また株価下落局面で下げ率が大きくなっていた(通常大型株よりも買い板が薄いために、下げを先導することが多い)中小型株指数ラッセル2000も上昇率が大きい。

6月の時点では来年金利を3.8%まで上げると見られていたFRBだが、今日のコメントを見る限りでは、支出と生産が金利上げ効果などで落ち始めている(株価は景気悪化懸念としてすでに下げで、その分は織り込んでいると見られる)、ならば、おそらく来年政策金利ピークは3.8%より低くなるし、来年にも再び利下げがあるだろう、市場はそんなふうに織り込んだ結果になった。

顕著なのは国債金利で「逆イールド」が続くことで、景気悪化懸念を引き続き織り込むものの、10年までの金利は長短共に下落。「インフレ圧力は低下しつつ、将来的には政策金利引き下げが見えてきた」と予想する金利動向になっている。ひとまず、6月のCPIの数字が「インフレのピークアウトを示したんじゃないか?」債権市場の金利動向は、市場参加者がそう予想していることを示しているというわけ

「くどいけど、とりあえず今日のところは。これが正しいかどうかはまだわからん」

ナスダックの上昇は手許のデータを見ると4月6日以来の大きな上昇。FOMC前にポジションを落としていた向きが大きく買い戻したと見られる。

利上げのペースは遅くなるのか?

パウエルも発言したように「継続的な利上げ」と言及しつつ「いずれ利上げのペースを遅らせる」ことも示唆(さらに9月の利上げガイダンスを示さなかったことで、9月の早速の「利上げペースのダウン可能性余地」を大きく残した=9月は0.5%以下しか利上げしないか?)。

政策金利と密接な関係にある二年もの国債利回りは、5月分のCPIに絡んで6月に3.4%まで上昇した後で、昨日は2.97%まで下落。国債市場参加者は、明らかにこれからの利上げペースが落ちるとふんだことになる。なおかつ「今はリセッションではない」と発言したことで「綱渡りは順調に進んでいる」と受け止められた。

もちろん「大本営発表」なので鵜呑みにはできないんだけど、市場参加者はとりあえず最高責任者に敬意を表して株買いで応えた、となる。

なお、「アメリカの利上げ政策の転換」という見方は為替市場にも及んでいて、136円台前半に円が戻したことは留意したい。

ドル/円日足(SBI証券提供)

ドル/円日足(SBI証券提供)

25日移動平均が下向きながら、価格がそれを下回ってきている。

金利ピーク予想し、NYダウもハイテク株が牽引

NYダウを牽引したのもハイテク。

マイクロソフトの6.7%高、セールスフォースの5.7%高、アップルの3.4%高、インテルの3.1%高。ここまでは「金利のピークは低くて済む」という効果による上昇といえるか。

これにウォルマート3.8%高、ナイキ2.5%高が続く。FOMC結果で述べられた「雇用は伸びが続いている(ので個人消費が続く)」というFRBの主張を受け入れて買い戻しが入ったといえる。

引っ張られるようにキャタピラ2.2%高、ゴールドマン1.9%高(景気循環銘柄だね)

Next: 相場上昇の時には、時価総額の大きい株を買え

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