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オリンパス不正会計での暴落から株価20倍に。なぜ復活できた?カメラも顕微鏡も売却して見据える未来=栫井駿介

オリンパスの経営改革

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このバリューアクトが入ってきたことによって、オリンパスは何をしたのか?

2018年に投資して、翌年2019年には、オリンパス経営の方針を示しています。これだけ早いのです。2018年に入って、2019年にその意向を汲んでオリンパスが経営改革を行ったということですから、余程バリューアクトのいうことの納得感が高かったのではないかと思います。

逆に言いますと、オリンパスはある意味、それまでの経営陣が逮捕されて会社の膿というものを出し尽くしてしまったからこそ、できたのかなと感じています。

<経営機構改革>

そういった経緯もあって、バリューアクトが入ってから、オリンパスは矢継ぎ早に改革を行います。

その改革というのは、まず経営機構改革です。

先ほどバリューアクトが投資先に取締役を派遣すると言いました。オリンパスでも例外ではなくて、どんどん取締役を社外から派遣しました。

なんと、現時点においてオリンパスの取締役が12名いるんですが、うち9名は社外取締役になっているのです。

今、社外取締役というのも重要性が叫ばれていまして、これが例えば過半数を超えるとか、3分の1は社外が良いといった話もあります。

しかし実際には、結構お飾り的な部分があります。

具体的には、社外とは言いながらかなり仲が良かったり、反対意見は唱えないような人を揃えている。見かけだけの社外取締役を採用している企業は、実は珍しくないんです。

一概にそれが悪いとは言えないんですが、少なくとも社外取締役の意味は果たしていないということになります。一方でこのオリンパスは10人中9名で、その経歴を見ても、明らかに関係ないという人たちが集まっているのです。

そのことがまさに経営改革を、よりリアリティのある方向に持っていけたんではないかと考えます。

<選択と集中>

次に行ったのが選択と集中です。先ほど述べた通り、顕微鏡事業やカメラ事業を売却しました。

「選択と集中」がどういうことかというと、それらの事業が赤字を垂れ流していたのであれば、すぐ売却すれば良いと思います。しかし、必ずしも赤字を垂れ流していたというわけではないのです。

特に顕微鏡化学事業に関しては、それなりに利益を出していました。ただしオリンパスとしては、営業利益率20%以上を目指したのです。

この顕微鏡事業というのは、実はその基準を満たしていなかったのです。また将来の成長ということを考えても、いま顕微鏡にそんなに強いニーズがあるとは思えなかったわけです。

すなわち、成長しないと考えたわけです。

<世界的メドテック企業へ>

それらを売却して、今度は何に集中したのかというと、「世界的メドテック企業へ」とあります。

オリンパスが持っている技術としては、いわゆる光学技術、レンズとかそういった技術で、それが顕微鏡、カメラと来たんですが、次にきているのが、内視鏡などの医療部門です。

この医療部門というところに目を付けたわけです。

この医療というのは、景気に左右されにくく、人々が豊かになればなるほど、より高度な医療を求めようとする。その高度な医療の中で内視鏡とか、そういった医療機器の需要というのはどんどん増えていくのです。

直近で、特に中国に関しては、年率で内視鏡の需要が17%から20%伸びているという、なかなかとんでもない状況だったのです。

しかも高い技術が必要とされますから、そこでオリンパスは、内視鏡に関しては実はもう世界トップシェア。かなり独占に近いぐらいのシェアを持っているのです。

そこに資源を集中していったのです。

内視鏡だけだと当然限界があるので、それ以外の治療機器分野にも進出していこうということで、そちらに舵を切っていくのです。

オリンパスはもはや、顕微鏡レンズの会社だけではなくて、メドテック、メディカルのテクノロジーの会社になろうという宣言を行っているのです。

その流れの中で、先ほどの顕微鏡事業売却を見ると、理解が進むのではないかと思います。

ここに集中して利益率20%以上を目指していきましょう。しかも集中した先というのが、これから成長が期待できる分野だということで、企業としては、まさにやるべきことをやったということが言えるのではないかと思います。

私が注目したいのは、似たようなことができる日本企業は、オリンパス以外にも結構あるのではないかということです。

1. 技術は持っていて、それを活かす。

2. そこに集中することができれば、経営を改革して利益を伸ばせる。

3. さらに資源を利益率の低いところではなく、投資収益率の高いところに集中させる。

4. そのことによって世界的に伸びていって成長軌道に乗ることができる。

仮に日本が成長しなかったとしても、海外の成長に乗って、企業として成長していけるというような企業は、かなり多いと思います。

ただ、問題はそれを受け入れる土壌です。

ずっと同じ会社だけでやってきたというのは、どうしても家族経営的なところがあって、昔からやっている事業を売り飛ばしたりすることはなかなかできません。

やっているところもあるのですが、例えば東芝とかを見ると、戦略的にやってるのではなくて、お金がないからやるしかないといった、追い込まれてからやるケースがあります。

本来はオリンパスのように積極的にやっていかなければならないのですが、気持ち的に受け入れられない経営陣が昔からいる人たちばかりだとそれがなかなかできない。

オリンパスは逆に大きな不祥事があったからこそ、受け入れられる土壌があったということになります。

オリンパスのような経営改革ができる技術を持った会社を見つければ、大きく成長できる可能性があるのではないかと思います。

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