超低金利政策が生み出した“サラリーマン大家さん”という幻想
近年の不動産投資は、このように家賃収入がローン返済額を大きく上回っている状況があるために行える投資法となっているのです。
32年前のバブル崩壊より以前は、ローン返済のほうが家賃収入よりも大きく、不動産投資といえば、多額の借金を背負った上に、毎月自己資金からの持ち出しになるのが普通でした。
現在の不動産投資状況とは、明らかに異なっている構図があったのです。つまりは、現在の不動産投資法は日銀の超低金利政策の恩恵に他ならないわけです。
そのため、借金額を大きく膨らませれば膨らませるほど、家賃収入とローン返済額の差額が大きくなり、無から有を生むがごとくに、キャッシュフロー(現金収入)が生まれ、うまくいけば、そのままFIREや早期リタイアによる、サラリーマン卒業も実現可能になるわけです。
一見すると、とてもオイシイ投資法にも見えてきます。
つまり、不動産物件がもつ投資の高利回りと、金融機関融資の低金利の「格差」を利用した、イールドギャップの活用という手法が、現在多くのサラリーマンの方々の注目を集める不動産投資法なわけです。「打ち出の小槌(こづち)」のような投資法ともいえるでしょう。
おかげで、投資元本に乏しいサラリーマンでも、ローンを使うことで大きな資産が築け、金持ちになれる…というのが、多くのサラリーマンの幻想を呼ぶ核心にさえなっています。
“資産”と“純資産”を間違えてはいけない
書店の不動産投資本コーナーに行くと「家賃年収1億円突破!」とか「年収500万円のサラリーマンが5年で資産10億円のメガ大家さんになった!」などといった、不動産投資における「成功物語」が誇らしげに語られる書籍がずらりと並んでいます。
こういう本を手に取った方は、「この著者ってスゴイなぁ!」と思わず感心するでしょうし「同じサラリーマンの自分でもやれるかもしれない」などといった夢や幻想を抱きがちでしょう──
(中略)
こうした“メガ大家さん”や“ギガ大家さん”と呼ばれる人たちは、本当に儲かっている人といえるのでしょうか。
総投資額10億円以上の不動産投資家の実際の例で見ておきたいのです。