イギリスで起こったようなポンドと英国債の大幅な下落が日本でも起こるのかどうか考察する。起こるとすると、これは大きな金融危機の引き金になるかもしれないのだ。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年10月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
英国で起きた「通貨安・債券安・株安」のトリプル安
散々報道されているが約1カ月前の9月26日、ポンドの投げ売りが起こり、ポンドの価値は大暴落した。またポンド下落ともに、英国債も売られ、長期金利は高騰した。これを阻止するために、「イギリス中央銀行」が介入し、英国債を買い支えた。
このような大暴落の原因となったのは、トラス新政権が打ち出した経済対策である。
財政がひっ迫するなか、特に富裕層をターゲットにした大減税の政策を立ち上げたのだ。これでトラス政権はイギリスの財政に懸念を示していた金融市場の信任を失い、ポンド売りと英国債売りが加速したのだ。ポンドは26日に1ポンド=1.0327ドルまで下落。クワーテング財務相が23日に財源の当てのない450億ポンド(480億ドル)の減税を盛り込んだ経済対策を発表してから8%下げたことになる。
富裕層を重視する減税のために政府の借り入れが増える見通しになった上、クワーテング財務省の言う経済政策の「新時代」とは財政規律よりも経済成長を優先することだとの見方が広がり、市場は動揺した。
これとともに、英国債相場も暴落した。9月27日には10年国債利回りが一時4.53%台まで上昇したほか、30年国債利回りも一時5%台に乗せ、2002年以来の高水準に達した。またポンドはユーロからアルゼンチンペソまで幅広い通貨に対して急落。26日朝には多くの経済専門家が、「イングランド銀行」に利上げ発表を行ってポンド安に歯止めをかけるよう求めた。
英国は、通貨安・債券安・株安のトリプル安となった。
これをさらに悪化させたのは、「英年金基金」による資産投げ売りだった。英国債価格の急落でデリバティブ(金融派生商品)の評価損が膨らみ、追加担保の差し入れを要求された「英年金基金」は、英国債を売って資金を調達しようとした。
そして「イングランド銀行」は、国債の暴落を阻止するために、緊急国債買い入れを行った。これは10月14日に終了し、少なくとも3,200億ポンドに上る英国債が買われた。「イングランド銀行」によるこのような緊急国債買い入れの実施によって、ポンド、英国債、株のトリプル安はなんとか収束した。
このような状況を招いたのは、トラス新政権による富裕層向けの大減税政策による金融市場の信任の失墜である。
この責任を取ってトラス首相は辞任し、代わりにスナク新首相が就任した、市場の信任を回復するには、この方法しかなかったようだ。
これは日本で起こるのか?
この突然と起こった国債、ポンド、株価のトリプル安で世界に激震が走った。イギリスの問題がいったん収束した現在でも、エコノミストの間で大きな話題になっている。
それというのも、今回のトリプル安の発生はイギリスだけに限定されたことではなく、他の主要先進国でも十分に発生する可能性があると見られているのだ。
そして、その筆頭に上がっている国が実は日本なのだ。