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イギリスの次は日本。「通貨安・債券安・株安」のトリプル安で金融市場が崩壊する日=高島康司

日銀の債務超過は起こりうる

2020年末の時点で、日銀の総資産が約724兆円に対し、負債は約659兆円となっており、65兆円程度しか資産が負債を上回っていない。相当にタイトな状況になっている。

もちろん、これですぐに日銀が債務超過に陥るわけではない。だが、目標とした2%を越えてインフレが進み、金利を引き上げざるなくを得なくなると、債務超過に陥る可能性が出てくる。

それというのも、日銀の負債の大半は、日銀券と民間銀行が預けている当座預金だからだ。いま新しい当座預金はマイナス金利になっているが、既存の預金には1%程度の金利がつく。他方で日銀は、保有する資産としての国債があるので、政府からの利払いがある。これは日銀の収入になる。

しかし、インフレ率の上昇で金利が上がるか、または「アベノミクス」の出口戦略で金利を引き上げると、日銀が当座預金に支払う利子が、政府から受け取る国債の利払い費を上回り、逆ザヤになる可能性が出てくるのだ。

さらに、金融緩和からの出口戦略の一環として、保有する国債を市場で売却しなければならなくなる。日銀は低金利の国債を高く買っている。しかし、これを売却する時点では金利を引き上げているので、国債を安く売ることになる。高く買った国債を安く売るということだ。これも日銀の損失を拡大させる

すると、ただでさえタイトな日銀のバランスシートは悪化し、債務超過になる。そのような状態になると、日銀法では政府が日銀を資金的に支援する義務がある。すると、これまでのように日銀が国債を買って政府の経済政策を支えることはできなくなる。日本政府の財政はひっ迫し、破綻の懸念も出てくる。

もちろんこうなると、国債の信用は落ちるので、国債の暴落も回避できなくなる。

このような「利上げによる日銀債務超過論」は一時期、根拠のなはトンデモ系の論理さとされていたが、いまではメインストリームのエコノミストが「これだけ大量の国債を買っているのだから、日銀による利上げは無理です」とあっさりと日銀債務超過論を認める発言をするようになっている。

財務省と日銀による市場介入

日銀は利上げができないとすれば、円安の歯止めになる手段は財務省と日銀による市場介入しかない。

これまでも3回ほど覆面介入といって隠密理に円買いドル売りの市場介入をしているが、その効果は長続きしない。せいぜい2日程度である。懸念されるのは、財務省と日銀の市場介入が無制限に行えない点だ。市場介入のための資金は、財務省の外貨準備金を使っている。

財務省と日銀は、1兆2,500億ドルの外貨準備を保有している。日本は円を支えるためにさらに大規模な介入を余儀なくされるという破滅のループが発生する可能性がある。1兆2,500億ドルというのは、円高に誘導するには十分な資金の額だとは言えない。

では、財務省と日銀はこの外貨準備金を使ってしまったら、どうなるのだろうか?

円安の無限なループにはまり込み、抜け出せなくなる可能性がある。ヘッジファンドなどの投機筋はこのことをよく認識している。また、日本銀行は主要国の中央銀行の中で唯一、金利を引き上げられないないことも知っている。

一方、FRBは現在の市場予想では5%程度まで金利を引き上げる勢いである。日本との金利差はますます拡大する。「モルガン・スタンレー」のアナリストは、FRBの金利5%と一致するドル/円の水準は150円前後と推定している。これでもかなり穏健な予想として見られているようだ。

Next: 円安を止める手段は市場介入だけ。外貨準備を使いきったらどうなる?

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