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クリスマスシーズンも米国大荒れ相場は続くのか?FOMCパウエル発言で混迷を増した米利上げの終焉=高梨彰

Fedは何処まで利上げをするのか

そして、今後もっと重要なのが、「Fedは何処まで利上げをするのか」です。

声明文で話が終わっていれば「利上げ停止→様子見」が幅を利かせます。もしかしたら12月4.50%で打ち止め。過去の例を参考にすれば、「保険」としての利上げを最後に行って、年明け25bpの追加の利上げを行い、4.75%で打ち止め。この辺が基本線です。

しかし、パウエル議長は「様子見」を明確に否定しました。同時に「何処まで」の参考として「実質」金利について、具体的な言及をしています。

言ったのは単純で「実質金利をプラス(positive)にしたい」です。

経済の世界で「実質(real)」は、「名目(nominal)」から「インフレ率」を引いた値です。

例えば、「名目」米10年債金利は現在4.15%。「名目」FFレート誘導目標上限値は4.00%です。

Fedはインフレ率の参照としてPCE(個人消費支出)から算出した値を基準として使います。パウエル議長の会見でも出て来ましたが、コア(エネルギーと食料を除いた)PCEの伸び率は直近5.1%。

この5.1%を「インフレ率」として用いると、「実質」FFレートは4.00%-5.1%。-1.1%です。

このマイナスをプラスへと変えるまで、Fedは利上げをしたいとパウエル議長は述べています。

そのまま受け止めれば、FFレート誘導目標上限は最低でも5.1%より高い値。Fedは25bp刻みでこれまで金利を変化させたので、5.25%まで引き上げる必要があります。

12月50bp利上げしたとしても、2023年も計75bpの利上げが求められます。

今年のインフレ率上昇が急なので、来年は「前年同月比」の値が放っておいても少し下がる、そんなことを考慮しても5.00%が妥当な水準です。

12月13-14日開催の次回FOMCでは、3か月毎に見直される経済見通し(SEP:Summary of Economic Projections)が公表されます。

9月時点の「2023年のFFレート(中心)見通し」は4.4%-4.9%でした。上限で言えば4.5%5.0%。パウエル議長の今週の発言は9月時点の上限を基準とした内容ということが分かります。

12月見通しにて、この値がどれだけ上方修正されるのか。修正幅予想は「◎25bp・〇50bp・▲75bp・△(大穴)0bp」です。

もし「穴」が出ると年末相場も荒れたままのクリスマスがやって来ます。

本日夜間の雇用統計が重要に

日本時間の4日21時30分、米東部夏時間8時30分に毎度の雇用統計が公表されます。下馬評は雇用者数20万人増(前月比)。少しくらい弱めの値が出た方が市場には優しい環境です。

でも、ブレが多い値なので、今回も出たとこ勝負。せめて夏時間最後、日本からは「早い時間の雇用統計」であることを有り難く思いつつ、相場と対峙します。

まとめ

・11月FOMC、75bp利上げと共に将来の利上げ幅縮小を示唆
・パウエル議長「政策と効果のラグと聞くと様子見を連想させがちだが違う」と
・実質金利プラスを素直に表現すると、利上げの終着点は最低でも5.25%

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image by:Federal reserve at Wikimedia Commons [Public Domain], via Wikimedia Commons
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徒然なる古今東西』(2022年11月4日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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