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「10倍株」のレーザーテック、ピークから大きく下げた今は買いか?急成長の要因と反動、今後の半導体業界での立ち位置とは=栫井駿介

急成長の要因

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改めて(これまでのことを)まとめます。

<直接的な要因>

直接的な要因としては、EUVマスクブランクス欠陥検査装置が市場のニーズに合致していた。
それは世界初の技術で、シェアがいまだに100%であるということ。

そして特定技術にこだわり長年開発し続けてきたことが、奏功したというところがあります。

また、半導体の微細化。
とにかく小さくなっていって、この時代にまさにマッチしたマーケットイン。
市場に合わせたものを作る、そして伸びる市場に入る。

半導体の市場は年々伸びていますから、そこで1位を取り続けることで企業として成長できることが成し遂げられたわけです。
結果、ものすごくニーズの高い、他の会社が作れないものを開発できたということになってきます。

<背景>

一方で背景としてあるのは、やはり会社の経営戦略にあると思います。
15年に及ぶ長期経営計画を忠実に実行したという側面が大きいと考えます。

二ッチトップ戦略。
「世界初」にこだわり、研究開発に特化してきたこと。

これがこの会社の成功要因。

日本の会社を見てると、技術はあるけれど、それを伸ばす経営力がない。
私から見てもそういうふうに見えるのです。

しかしこの会社は、それらを克服して素晴らしい技術を持ち、かつ素晴らしい経営を行ってきた。
そんな会社であると言えるわけです。

研究開発特化を見ても、レーザーテックの平均年収は1,300万円。
優秀な技術者を獲得するために、給料を払うことを惜しまないという側面があるわけです。

ちょっと話それるのですが、先ほど年収が1,300万円と言いました。
これは世界的に見たら、かなり安い水準だと思っています。

というのも、アメリカで優秀な技術者取ろうと思ったら1,300万じゃ全然足りないです。
1人2,000万、3,000万というのが当たり前の世界なので。

一方日本で1,300万といえば、結構高年収・高収入と言えます。
逆に言えば、素晴らしい技術を持っているのに比較的リーズナブルな給料で、優秀な技術者を雇えるという日本の環境の強さも、実は企業の強さに影響している部分はあるのではないかという気はしています。

これはマクロ環境の話なので、今回は一旦置いておきたいと思います。

業績はアップダウンが激しい

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重要なのは、これからどうなるのか。
というところで、15年の計画も2024年までなので、そろそろ終盤になってきます。

実はこの会社の業績を見てみますと、直近で急に伸びたんですが、実はアップダウンが非常に激しい。
今すごく大きくなったので、それまでの変化率で見えないんですけれども、この青のラインで示した売上原価率を見ますと、一気に50%を超えて伸びている年もあれば、マイナスになるとマイナス25%を突き抜けて下落している年も実はあったりするのです。

それほどアップダウンが激しい会社なのです。

なぜかというと、先ほど大きい装置を納入するといいました。
これは単価で言うと、1台何十億円というものです。

一つの工場にそれが数台入るということになりますから、一件で何百億。
100億円単位で納入することになります。

発注するインテルとかそちらの方から考えると、当然工場を新しく作るときにこういった装置を入れます。
しかし翌年も同じ100億円の投資をするかというと、そんな毎年毎年、工場は作りませんから、やはり需要としては数年おきということになるわけです。

従って大きく伸びたかと思ったら、その次はそれほど受注がなかったりして、ガクンと落ちるというのが避けては通れない、売り上げの特徴といえるのです。

直近で各半導体会社、TSMCとインテルもそうなのですが、何兆円の投資をして工場を作りますというニュースが流れてました。
その時は、半導体製造装置も必要なのですが、それが一段落すると、急に仕事がなくなってしまうわけです。

そう考えると、今大きく伸びましたけれども、この先数年どうなるかということは、少し考えてみた方がいいというところがあります。

ライバルのKLAは何倍も大きい

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さらに言えば、ビジネスの世界では必ず競争相手が現れます。
レーザーテックの競争相手といえば、世界を見る必要あります。

KLAテンコールというアメリカの会社があります。
その会社をみますと、実はレーザーテックと同じ半導体検査装置を作っている会社。

レーザーテックが、EUV光による検査装置を開発する前は、完全にガチンコで戦っていました。
ガチンコである一方で、規模で見たら何倍にもなるわけです。

しかも恐ろしいことに規模で何倍になるにもかかわらず、売上高の伸び率で見たら、レーザーテックとほとんど変わらないぐらいすごく伸びてるわけです。

それが一つには、半導体の微細化によって、こういった技術がすごく必要になってきた。
半導体市場自体もすごく拡大してきた。
その波に乗ってレーザーテックも伸びたし、KLAも伸びたということになってきます。

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